今月読んだ本 | 読書傾向に難あり? | 「本陣殺人事件」横溝正史 | 「獄門島」横溝正史 | 「八つ墓村」横溝正史 | 「逃避行」篠田節子 | 「女たちのジハード」篠田節子 | 「廃院のミカエル」篠田節子 | 「神鳥(イビス)」篠田節子 |
今月読んだ本 | 2012.06.30 |
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今月は横溝正史の自薦集を読んだので、こんな偏ったことになっちゃいました〜(^^ゞ |
読書傾向に難あり? | 2012.06.23 |
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横溝正史の読書日記を何回か続けてアップしたところ、Mさんから 「いつまで横溝シリーズなの?怖い〜」と悲鳴が(^^; 確かに「xx殺人事件」は朝から読んで楽しいモノではないなぁ(^^; じゃあ、と横溝シリーズの次に読み返そうと思っていたものを考えてみた。 …いかん、どれもミステリ系、ということはxx殺人事件モノじゃないか! ユーモアミステリやラブサスペンスだって読んでるんだけどな。 人が殺されちゃうのは一緒だよな。 ということで、そもそも自分の読書傾向に難あり、と気づいた次第。 これからも読書日記を続けるなら、篠田節子シリーズを続けたように、一般文学の作家シリーズを開拓せねば。(-_-;) あ、横溝シリーズはせっかく書いたので、そのうちに続きをアップします。 ストックが3冊分と読んでる途中のが1冊あります。 |
「本陣殺人事件」横溝正史 | 2012.06.21 |
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久々に読み返しましたが、これはうっすらとトリック&犯人を覚えていました。 昭和12年、岡山県の旧本陣、一柳家で当主の賢蔵と久保克子の結婚式が執り行われた。 皆が寝静まった深夜、突如として琴の音が激しく鳴り響く。 皆が新婚夫婦の寝室である離れへ様子を見に行くと、夫婦が血塗れになって斃れていた。 夜間降り積もった雪のため、現場は密室となっており、捜査は早々に暗礁に乗り上げる。 克子の叔父、久保銀造は独自の事件捜査のため金田一耕介を呼び寄せる。――― 金田一耕介登場の第一作だそうです。 金田一のパトロン、久保銀造との馴れ初めも明らかになります。 深夜激しく鳴り響く琴の音。 紅殻塗りの室内に真新しい畳と金屏風、そこへ血塗れの死体。 横溝正史らしい、映像で見たいと思わせる作品です。 岡山県シリーズでもあるこの作品、一部伏字となっている地名が心当たりのある地名ばかりで、あのあたりか〜と思い浮かべながら読みました。 |
「獄門島」横溝正史 | 2012.06.20 |
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なぜか眠れないので、深夜に更新しています。 久々の読み返しです。おもしろかった〜。 金田一耕介が戦友の頼みで瀬戸内海に浮かぶ獄門島へやってくるところから話が始まります。 自分が死ぬと妹達が殺される…と言って息を引き取った戦友。 実際に、金田一が戦友の訃報を告げたとたんに奇妙な連続殺人が始まります。 犯人も動機もすっかり忘れてて、謎解きでびっくりしました。 三姉妹が被害者なのは覚えていたのですが。 「きちがいじゃが仕方ない」の意味も覚えていたのですが。 三姉妹の見立て殺人は衝撃的で、是非とも映像で見たいと思わせられます。 実際に映像で見ました。 おどろおどろしたシーンに振袖の華やかな色彩が印象的でした。 雪月花の名を持つ三姉妹、振袖を身に纏ってはしゃぐ姿はひらひらと飛び回る蝶々のようです。 その華やかさが、一層哀れです。 しかも、ラストで実は三姉妹が殺される必要は無かったことが明かされます。 物語とはいえ、本当に哀れな存在です。 |
「八つ墓村」横溝正史 | 2012.06.19 |
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横溝正史を久々に読み返しています。 戦国時代、尼子氏の家臣8人が落人となって村にやってきたが、村人たちは彼らの隠し持つ財宝を目当てに彼らを殺害する。 しかし、財宝は見つからなかった。 その後、落人殺しにかかわった者たちの変死が相次ぎ、村人たちは八つの墓をたてて明神として奉ったことから、村の名を八つ墓村と呼ぶようになった。 大正末期に村の分限者、田治見家の当主要蔵が妾の逃走をきっかけに発狂し、32人を惨殺する事件があった。 その際逃れた妾の息子、寺田辰也が本作の主人公である。 戦後、辰也が弁護士によって探し出された時から、むごたらしい連続殺人事件が始まる。――― 犯人も動機もすっかり忘れていました。 記憶に残っていたのは鍾乳洞くらいです。 たしか映画かドラマでも見た記憶があるんですが、双子の婆様なんて出てたっけ? 「祟りじゃあ〜!」ってのはなんとなく覚えてます。 ヒロイン役の典子は最初知恵遅れを思わせるような書き方だったのですが、途中からしっかりしたところを見せ始め、最後はえらく頭の回る女性になってました。 恋すると女性は変わるということでしょうか? 実際にあった津山30人殺し事件にヒントを得て書かれたこの作品。 作中での要蔵の犯行時の装束は、津山事件の装束をそのままなぞったそうです。 津山事件は山岸凉子の漫画で読みましたが、凄惨で恐ろしい事件でした。 |
「逃避行」篠田節子 | 2012.06.17 |
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飼い犬が隣家の子供を咬み殺してしまった、主婦と愛犬の逃避行物語。 古谷家の飼い犬、ゴールデンレトリーバのポポが隣家の子供に癇癪玉をぶつけられ、怒って子供に咬み付いてしまった。 首に咬み付かれた子供は救急搬送されたが出血多量で亡くなった。 飼い方に過失は無く、刑事責任は無いが、ポポが子供を殺したことに間違いはない。 マスコミの取材攻撃や近所の苦情を受け、夫は保健所へ連れて行くことにするが、妙子は納得できない。 他の土地へ引っ越すことも、独立した娘を頼ることも、拒否される。 妙子は、夫が2千万円を振り込んでいた口座の通帳と印鑑を懐に、ポポと出奔した。――― 妙子とポポはヒッチハイクで遠くへ逃げようとしますが、マスコミの報道の影響で、あちこちで連れ戻される危機に直面します。 苦労の末に辿り着いた新しい居場所で、妙子もポポも逞しく生きていきます。 が、最後にあっという大転換が待ちうけていました。悲しい結末。 小説では男児が執拗にポポへのいたずらを繰り返していたことが書かれていたので妙子に感情移入して読みましたが、子供が死んでいる時にそんな部分まで報道するマスコミは無いでしょうから、ニュースで見聞きしただけでは飼い主が悪いって思うのでしょうね、たぶん。 隣家の子供のいたずらがひどいなら、子供が侵入してこれないように何らかの対策を取るべきだったとも思うし。 微妙なテーマで、妙子に感情移入するのは果たして正しいことなのか、と悩みながら読みました。 悪者にされてしまったポポは可愛そうですが、ポポ自身は何も考えて無さそうなのが救いです。 その分、妙子の頑張りが空回りしているような気もしました。 二者択一を目の前に押し付けられ、家族よりもポポを選んでしまった妙子。 ポポも家族の一員ではあるのですが、夫や娘たちよりもポポを選んでしまう妙子の家庭の在り方にむなしさを感じました。 |
「女たちのジハード」篠田節子 | 2012.06.16 |
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みどり、康子、リサ、紗織、紀子、のOL仲間5人のそれぞれの人生の戦いを描いた長編小説。 (長編小説となっていますが、各章が一人ひとりに焦点を当てた短編という構成なので、短編連作集という方があっているように思います) 子会社へ転籍させられた、既婚者のみどり。 なんとなく長年勤めていて、それのどこが悪いと開き直ってマンション購入を思いたった康子。 結婚願望が強く、そのために日夜努力しているリサ。 得意な英語で身を立てたいと英語力に磨きをかける紗織。 ふわっとしておとなしい紀子。 個性の全く異なる5人が、各々の目的に向かって戦っています。 夢破れたり方向転換することもあるけれど、各々が自分の人生を選択していく姿が生き生きと描かれています。 とてもおもしろく、笑いながら&泣きながら読みました。 私とは性格は全然違うけど、ヤクザの恫喝にもめげず競売でマンションを買った康子に一番共感しました。 決して戦う女性という性格ではないんだけど、いざという時に諦めない粘りはすごいです。 売れない無農薬トマトを作っている青年と知り合って、結婚と事業に乗り出して行こうとする精神力に感服。 彼女だけではなく、それぞれの人生の選択に拍手を送りたい。 でも、一番印象が強烈なキャラは紀子でした。 DVの一方的な被害者かと思いきや、その手順の悪さや優柔不断さ、自分のことしか考えない生活感で相手をどれだけ疲れさせることか。 身近にこんな人がいたら、イラチな私は逆上しそうです。 紀子を一時的に同居させ、そのマイペースさに耐えた康子は偉い! |
「廃院のミカエル」篠田節子 | 2012.06.07 |
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ギリシャ、ピンドス地方を舞台にした幻想的ホラー小説ですが、読後感はとてもいいです。 食品専門商社の営業ウーマンだった美貴は、中東駐在員を経て現地法人化というリストラを受ける。 しかも中東の情勢悪化で営業自体ができない状態となっていた。 自らのキャリアの起死回生をかけて、美貴はギリシャに赴く。 美貴は、アテネ駐在員事務所の通訳を請け負っていた綾子の自宅で味わった硬蜜に商売の可能性を見出す。 ピンドス山中の村ミクロペリストーリで買ったというその硬蜜を求めて、美貴はピンドスへ赴く。 通訳として無理やり同行を頼んだ綾子と、奇遇なめぐりあわせで同行者となった文化財修復員の吉園、野良犬のソクラテス、の3人と一匹で向かったピンドス地方では、ミクロペリストーリは生活の跡もそのままに既に廃村となっていた。 吉園の目的地だったメサポタモス修道院も既に廃院の様相を呈していたが、人の気配を感じる。 しかし、ミサの途中であろう祈りの声や歌声が聞こえる聖堂は無人だった。 近くの修道院の司祭は、メサポタモス修道院の壁画を修復し、漆喰で塗り潰された神聖なものを解き放ってほしいと吉園に頼むが、――― 廃村や廃院の原因は、原因不明の病気でした。 「廃院のミカエル」という表題のミカエルには、吉園が探していたミカエル・ダマスキノスの描いた絵と、修道院の僧坊に描かれた大天使ミカエルの絵との2つがかけられています。 2つのミカエルを探したことが、結果的に廃村や廃院での死の謎とその病気の由来を結び付け、科学的な解決を見せます。 また、美貴も商売の芽を見つけ、起死回生に向けて動き出します。 しかし、廃院では今もまだ信仰の生活を送っていた人々の思いが残され、祈りを捧げています。 ギリシャ正教では、故人の霊というものはありえないそうです。 「廃院のミカエル」の中で司祭が言います。 『人のいなくなった修道院には、よこしまなものが棲み着く。神の助けを借りて、よこしまなものを封じ込めていた場所から誰もいなくなり、荒れ果て、聖なる力が失われた時、次々と邪なものがやってきて棲み着き、最後に封印されていた悪魔が目覚める』 こういう信念は、我々日本人にはわからない感覚です。 悪魔は個人の心の中にあり、場所に取りつくものではない。 作者にも同じ思いがあるように感じます。 |
「神鳥(イビス)」篠田節子 | 2012.06.06 |
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時空を超えたホラー小説。 イラストレータ谷口葉子は小説のカバー絵の仕事で似せるように指定された「朱鷺飛来図」に魅せられる。 夭折した画家、河野珠枝の残したその幻想的な美しい絵に、肌の粟立つような、凝縮された地獄とでも呼ぶべきものを感じたのだ。 しかし珠枝は花鳥風月リアリズムの凡庸な画家であり、「朱鷺飛来図」以外は技術はあっても凡作ばかりであった。 なぜ、この絵だけが幻想的で、背筋をゾクッとさせる力があるのか。 葉子はカバー絵を依頼してきた小説家、美鈴慶一郎と一緒に、珠枝の謎を探る。 幻想的で美しい「朱鷺飛来図」には凄絶な地獄絵が隠されていた。 佐渡へ、そして奥多摩へと謎を追う内、二人は時空を超えて90年前の真相を目の当たりにする。――― 「朱鷺飛来図」に深入りしたために、一生この絵のもたらす恐怖から逃れられないかもしれない2人。 でも、2人で乗り越えようとする葉子の逞しさに希望を見出せます。 何よりも「朱鷺飛来図」の描写が美しく、存在しないその絵をぜひ見たいと思わされます。 この小説の表紙にも、色合いこそ違え、朱鷺飛来図を暗示するような幻想的なイラストが使われています。 足元の牡丹の花が小説に描かれている通りの地獄絵に見えてしまうのではないか、と恐ろしくなりました。 |