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今月読んだ本 | 2012.04.30 |
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「太陽の王と月の妖獣」ヴォンダ・N・マッキンタイア | 2012.04.22 |
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太陽王ルイ14世の宮廷を舞台とするファンタジー。上下巻。 神父であり自然哲学者でもあるイブは、国王ルイ14世の命を受け、遠洋へ探検の旅に出て海の妖獣を生け捕りにしてきた。 イブの妹マリー・ジョゼフは妖獣の世話をするうちに、妖獣が高度な知能を持つ海の女であり、複雑な音律の歌を言語としていることを知る。 妖獣の歌はマリー・ジョゼフに歌の意味をイメージとして伝え、彼女はそれを翻訳して人々に語って聞かせる。 マリー・ジョゼフは妖獣と心を通わせ、妖獣を海に帰す努力をすることを約束する。 しかし、それにはルイの許可が必要であり、妖獣を獣として扱い、食するつもりのルイの気持ちを変えることは出来るのか? マリー・ジョゼフは命がけで妖獣を救おうとするが、――― 久々に大人向けファンタジーを読みました。 とてもおもしろかったです。 読むのにかなり時間がかかったので、どこでこの本を知ったのか既に忘れてしまいました。 ルイ14世時代が背景ということで女性のできることが限られており、才能あふれるマリー・ジョゼフも思うように行動することが許されません。 その中でも自分の信念を貫き通そうとする姿は、無謀ながらも爽快です。 ハッピーエンドで読後感の良い小説です。 宮廷が舞台ということで、宮廷の様子、特にファッションを描写したシーンが沢山出てきます。 男性達がかつらのおしゃれを競う描写や女性達がヘアスタイルの豪華さを競う描写が楽しかった。 100年後のマリーアントワネットの時代にはグレードアップして、髪で船をかたどったりもしていたようですね。 挿絵が無いのが残念でした。 ところで、マリー・ジョゼフってすごい名前ですね。 マリアとヨゼフ。キリストの両親です。敬虔なキリスト教徒って感じ。 マリー・ジョゼフが小説の最後で結婚するクレティアン伯のクレティアンはキリスト教徒という意味だそうです(作中では無神論者という設定でしたが)。 イブを含めた3人は架空の人物なのですが、この二人、最初から結ばれる前提で名づけられたって感じですね。 |
本ブログ&読書日記ブログで注目記事1位! | 2012.04.21 |
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当サイトのコピーブログ「きりぎりすの徒然草vol.2」は「にほんブログ村」のランキングに参加しています。 4/18にアップした『「讃歌」篠田節子』が、昨日4/20の本ブログ&読書日記ブログで注目記事1位にランキングされました! 参加ブログ数は、本ブログが8956サイト、読書日記ブログが2139サイトもあります。 その中で、私の記事が一日でも1位にランキングされたことはとても光栄です。 ブログを読んで下さった皆さん、ありがとうございました。m(_ _)m |
「讃歌」篠田節子 | 2012.04.18 |
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テレビ番組製作会社に勤務する小野は、レコード会社社長からの誘いで小さな教会でのコンサートを聴きに行く。 クラシック音楽とは無縁な小野だったが、ヴィオリストの演奏するアルペジオーネソナタに感動し涙する。 この感動がヴィオリスト・園子の苦悩の日々の果てにあったことを知った小野は、彼女のドキュメンタリー番組を制作する。 番組の効果もあり園子は一躍売れっ子となるが、楽壇からは稚拙な演奏と揶揄される。 彼女の語る挫折は彼女が語った通りなのか、園子の本質にせまるべく小野は調査を進めていく。 そして、小野は園子が自分の力量を超えた期待に応えようと努力する中で、ますます自信を無くしていったことを知る――― 元天才少女で、自殺未遂による体調不良で20数年も楽器を手にできなかったところから復活した園子。 一般大衆には受けがよいが、音楽を学んだ人々には不評な園子。 楽器こそ違え、一時のF・ヘミングブームを彷彿します。 (当時の楽壇での評判は知りませんが) 私はヘミングが全く好みではなく、むしろ同じ頃にCDデビューした松本和将くんのカンパネラの方が好きと言ったら、オケ仲間から「あの良さがわからないなんて、まだ感性が子供なんだよ」と言われてしまいました。 久々にヘミングを聴いてみて、これは演歌だなぁと思いました。 演歌は嫌いじゃないし、音楽の表現としてそれも有りだと思います。 ただ、なんでもかんでも演歌風味というのは芸が無さ過ぎるかなぁ、なんて。 まあ、これはあくまでも私の趣味であり私見です。 園子のヴィオラにも演歌的な要素が強かったんじゃないでしょうか。 |
「ハルモニア」篠田節子 | 2012.04.17 |
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プロのチェロ奏者東野秀行は、音楽療法の補助指導員として精神障碍者のための施設に通っている。 そこで出会った、音楽に天才的な才能を持つ由希。 チェロを指導し始め、由希が絶対音感と完璧な模倣才能を持つことを知る。 そして、技術的には東野を追い越していく。 しかし、その音楽はあくまでも模倣であり、彼女自身の音ではない。 東野は由希自身の音を出すことにこだわり、由希への指導に指導員としての範囲を逸脱してのめり込んでいく…。 とても重たいテーマの小説でした。 力のある文章で、ぐいぐいと小説の世界に引き込まれていきます。 東野ののめり込みようにハラハラしつつも、東野が由希に彼女自身の音を持たせたい気持ちに共感し、はたして彼女はどうなるのか、と先を急ぐように読みました。 不幸な結末ではありますが、読後感はいいです。 音楽好きの方にも、そうでない方にも、オススメの小説です。 |
「三つ首塔」横溝正史 | 2012.04.12 |
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横溝正史の小説の中で一番好きな作品です。 犬神家同様に、主人公・音禰がとある男性と結婚するか、しない場合は遺言者が亡くなるまでに親族の数が減れば取り分が増えるという遺書が準備・公開されたことから、殺人事件が始まっていきます。 音禰は夫と定めた男に振り回され、警察に追われる身となり、男に庇護されます。 殺人が続く中で、男が気にする三つ首塔の住所を知り、共に三つ首塔を訪ねていく… 個性の強い親族達、戦後の風俗店の様子、親族達が殺されていく情景、三つ首塔、などなど。 この小説もビジュアル要素がてんこ盛りです。 古谷一行が金田一耕介を演じていた初期に、黒沢年男と真野響子でドラマ化されました。 主演二人のバタ臭さが戦後の繁華街の毒々しい薄明りにマッチし、雰囲気を盛り上げていました。 このドラマも大好きでした。 音禰が会ったばかりだが気になる存在の男性に無理やり体を奪われ、彼を悪人と思いながらも夫と定めて縋っていくあたり、一昔前のハーレクインロマンスに通じる展開です。 現代の女性ならこういう展開にはならないんでしょうが、そこは昭和も戦後の時代。 時代背景を思えば違和感はありません。 |
「犬神家の一族」横溝正史 | 2012.04.11 |
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どこかのブログで、こたつに上半身だけ潜りこんだ猫ちゃんを「うちのスケキヨ」と紹介している写真を見ました。 猫ちゃんはとても可愛くてほほえましかったんだけど、その写真を見て久しぶりに本家本元のスケキヨを読みたくなった私は発想が間違っているでしょうか? 「犬神家の一族」を最初に読んだのは高校時代くらいかな? 久々に読み返したら、すっかり忘れてました。 覚えていたのは、スケキヨの仮面と例のポーズとあと少し。 スケキヨの印象が強すぎるせいでしょうか。 犯人も忘れてました。 菊人形にスケキヨの仮面に例のポーズに、インパクトたっぷりなビジュアル要素てんこ盛りで、実に映像化向きの作品ですよねぇ。 映像化を狙って書かれたものなんでしょうか? ビデオも借りてこようかな。 それにしても、横溝正史の小説に出てくる金持ちは皆、遺族が殺しあうような遺言が好きですね。 弁護士、止めろよ。(それじゃ小説にならないけど) |
「おやすみラフマニノフ」中山七里 | 2012.04.05 |
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事件の始まりは、密室で消えた2億円のストラディバリウス――― 小説序盤で主人公の晶が聴きに行ったコンサートが前作「さよならドビュッシー」で探偵役を務めた岬洋介の出演するものだった、また晶の通う音大の講師も務めているという流れで、岬洋介が違和感なく今作にも登場してきます。 音楽描写は前作より今作の方が私好みで楽しかった。 ラフマニノフのピアコン2番って、ほんと、ストーリーの盛り上げにはピッタリですよねぇ。 あと、台風接近の避難所で晶と岬がチャイコンを演奏する場面はとても感動しました。 晶が念願かなってプロ奏者になれますように。 ミステリーとしては前作の方が楽しめました。 一人称形式の小説なのですが、晶が自分のことを「ボク」というのが気になって気になって…(^^; 普通に「僕」でいいのに。 晶が男性と判明するまで、ボクっ子な女性なのかと思って悩みながら読みました。 (大昔に「頑張れ!ボクちゃん」という少女漫画があったんです…。ああ古い) |
「さよならドビュッシー」中山七里 | 2012.04.04 |
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主人公、遥はピアニストを目指す16歳の少女。 裕福な家庭に育ち幸福だった彼女が、火事で祖父と従姉妹を亡くし、自身も大やけどを負う。 ほぼ全身の皮膚を移植した彼女は過酷なリハビリに耐え、コンクールを目指すが、そんな彼女の周りで不審な出来事が起き始める… 冒頭の火事のシーンは、恐ろしかった。 人が燃える描写が、淡々としているだけに余計にリアルに感じられました。 こんな死に方はいやです。 おもしろいミステリーで、一気に読みました。 ミステリーとしてだけではなく、青春小説・音楽小説としても面白く読めました。 読み返してみるとあちこちに伏線があり、やられたー!という感じです。 最後のページでタイトルの意味が判明します。 このタイトルこそがこの小説で最大のミステリーなのかもしれません。 |