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今月読んだ本 2012.03.31
荒木源
「ちょんまげぷりん」「ちょんまげぷりん2」
一条ゆかり
「プライド 1〜12」
ルイス・キャロル
「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」
篠田節子
「死神」「カノン」
篠田真由美
「螺鈿の小箱」
笙野頼子
「愛別外猫雑記」
胡桃沢耕史
「OL博徒」「新OL博徒」
高樹のぶ子
「百年の予言 上」「百年の予言 下」
竹内久美子
「アタマはスローな方がいい」
田中雅美
「あわせて三百歳探偵団」「死神村の三百歳探偵団」
ジル・チャーチル
「カオスの商人」
C.S.ルイス
「ライオンと魔女」「カスピアン王子のつのぶえ」「朝びらき丸東の海へ」
「銀のいす」「馬と少年」「魔術師のおい」「さいごの戦い」
森雅裕
「モーツァルトは子守唄を歌わない」「ベートーベンな憂鬱症」

今月は怒涛の勢いで読みました!なんというか、節操とか統一感とか、全く無いですね(^^; 大半が図書館で借りた本です。「カノン」と「百年の予言」がとてもよかった。(ナルニアは別格)


「カノン」篠田節子 2012.03.29
20年前に愛した男が、ヴァイオリンでバッハのカノンを演奏しながら自殺した。―――

バッハの音楽を背景に、3人の男女の恋愛と心理を描いた異色ホラーです。 確かに怪奇現象は起こるのですが、怖いホラーとは異なり、幻想的な印象です。

主人公は、20年前に愛した男性の遺品である録音テープを受け取ったことをきっかけに、テープに隠された謎や彼の人生の謎を探ります。 掘り起こされた数々の事実と共に、彼女は昔の気持ちを取り戻していきます。 そして、小節のラストでは、昔の自分を取り戻すため、今の自分が捨てられるものと捨てられないものを整理し、改めて人生に向き合っていく…

冒頭からグイグイと小説の世界に引き込まれていき、一気に読みました。 終盤の力技的なクライマックスは、泣きながら読みました。 心に残る小説です。 陳腐な表現しかできませんが、いずれまた読み返したいです。

背景として出てくるバッハの「フーガの技法」を知らないので、残念ながら、頭の中で音楽を鳴らしながら読むことができませんでした。 2声のインペンションでピアノに挫折して以来、バッハは長らく鬼門だったので…  YouTubeで探して聞いてみたら、2声のインペンションもフーガ形式なことに気づきました。 やっぱりフーガはちょっと苦手かも。 でも心に響く曲ばかりです。


「ちょんまげぷりん」荒木源 2012.03.27

「ちょんまげぷりん」「ちょんまげぷりん2」を読みました。2冊ともおもしろかったです。

1作目では江戸時代の武士木島安兵衛が現代の日本へタイムスリップします。 安兵衛は保護してくれた遊佐ひろ子がシングルワーキングマザーのため、保護のお礼に息子の友也の相手や家事を引き受けるのですが、特にお菓子作りの腕を上げ、コンテストでの優勝をきっかけに有名パティシエとなります。 いろいろあって再度のタイムスリップが起こり、安兵衛は江戸時代に帰っていきますが、その後、ひろ子と友也は安兵衛が帰還後に開店した菓子屋が現代まで続いていることを知ります。

2作目は1作目の8年後。14歳になった遊佐友也が江戸時代へタイムスリップします。 しかし、頼みの綱の安兵衛の菓子屋は廃業しており、安兵衛も行方知れずです。 その後、少年時代の勝麟太郎に庇護されたり、市川海老蔵の目に留まって女形として一座入りしたり、牢屋に入れられたり、島流しの刑にあったり、取り込み詐欺の疑いで牢屋入りしていた安兵衛を助けるために徳川家斉の前で豆乳プリンを作ったり、などなど盛り沢山な事件が起こります。 再度のタイムスリップで友也は現代に帰ってきましたが、タイムスリップがもう二度と起こらないだろうことに友也は確信を持っています。

1作目の安兵衛は、現代生活によって柔軟な考えと菓子作りのテクニックを身に着けて江戸に帰ります。 2作目の友也は、江戸での経験によって、何事にも真摯に取り組む気持ちを身に着けます。 異なる世界での異性へのほのかな思いは叶いませんでしたが、もっとずっと大きなものを身に着けてそれぞれの時代に帰ることができた二人。 読後感がいい小説です。


「OL博徒」胡桃沢耕史 2012.03.23

大手銀行丸の内銀行を創立した中上川財閥の跡取り娘で、お内裏雛とあだ名される上品な美貌の持ち主、中上川良子。 平日は丸の内銀行でOLをしているが、土曜の夜は会津の小鉄の正統を継ぐ桐山一家の跡取りとして賭博場で壺振りをする博徒でもある。 そして、ある事件を解決したことをきっかけに、警視庁の依頼を受け、数々の事件を解決する…!

昭和62年に出版された、痛快な連作ユーモア探偵小説です。 胡桃沢さんのユーモア探偵小説が大好きで、一時期ハマっていました。 その中でも、この「OL博徒」は現実離れした設定が面白い一冊です。 (続編も出ているので、正しくは二冊です)

この小説、昭和から平成に変わる前後に、先日訃報のあった山口美江さん主演でテレビドラマ化されました。 ドラマは原作よりずっとドタバタしたコメディに仕上がってましたが、山口美江さんはOL博徒というトンデモ設定な役どころにぴったりハマっていて、とても綺麗でした。 山口美江さんの訃報を耳にして久しぶりに読み返しましたが、今読んでもおもしろいです。


「ライオンと魔女」C.S.ルイス 2012.03.18

久しぶりにナルニア国物語(全7巻)を読んでいます。 児童文学だけあって、ストーリーが単純明快でご都合主義で楽しいですね。 会社に入って最初のボーナスで全7巻セットを大人買いしたくらい、大好きな物語です。

全7巻の中で、1巻目の「ライオンと魔女」が一番好き。 何よりも、洋服ダンスの奥がナルニアに繋がっているというファンタジーが大好きです。

「ライオンと魔女」を初めて読んだのは小学生の頃でした。 自分の家の洋服ダンスももしかしたらナルニアに…と夢見たものですが、日本の狭い家屋では洋服ダンスは奥行きが短いですもんね。 洋服ダンスを開けて中に入ろうとしてちょっと洋服をよけたら裏板が見えてしまい、中に入る以前に失望したことが忘れられません。


「百年の予言」高樹のぶ子 2012.03.11

ルーマニアの独裁政権崩壊前の情勢を背景に、楽譜にまつわる謎と恋愛を描いた小説です。 ポルムベスクのバラーダの楽譜と、走馬充子が入手したもう1枚の楽譜。 二つの楽譜に暗号が隠されています。 暗号の謎解きは意外で面白かった。 楽譜が2枚必要なところが暗号のミソです。

小説の序盤に、 「その曲は後に、走馬充子の主要なレパートリーというか、生涯を支える一曲になるのだが、そんなことは思いもよらず(略)」 というポルムベスクのバラーダとの出会いの場面があります。 この一節で、ヒロインのバイオリニスト走馬充子のモデルは天満敦子さんだとすぐわかりました。 名前もよく似せてつけられていますね。 長くまっすぐな髪、というのもご本人と同じ。 実際、後書きに「天満敦子さんと彼女の音楽に感謝を捧げます」とありました。 天満さんのバラーダの演奏にインスピレーションを得て、この小説を執筆されたそうです。

つい先日「音楽あれこれ」に天満さんのCDを買うと思う、と書いたばかりです。 思いがけず、小説で天満さんと出会って、あまりのタイミングの良さに驚きました。

今、天満さんの演奏する「望郷のバラード(バラーダの邦題)」を聞きながらこれを書いています。 なんとも物悲しい、切ない響きです。 なぜか「上野海峡冬景色」を思い出してしまうのは私が日本人だから? (生まれも育ちも山陽地方ですけどね)


「船上でチェロを弾く」藤谷治 2012.03.01

ハイドンとモーツァルトへの思い入れが満載のエッセイ集。 独断と偏見に満ちてますが、語り口が私にはとても楽しく感じられ、面白く読めました。

モーツァルトがチェロのソロ曲を書いていなかったなんて、このエッセイを読んで初めて知りました。 モーツァルトがあと数年長生きしていたらチェロ曲を書いていたに違いない、との作者の意見に同感です。 でも、その代わりにモーツァルトにはビオラの名曲がある! ビオラ曲を書いてくれていてよかった! バイオリン弾きの私としては、そちらの方が重要です。 って、ビオラを弾くわけじゃないですけどね。


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