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今月読んだ本 |  「再会」藤谷治 |  「船に乗れ!」藤谷治

今月読んだ本 2012.02.29
藤谷治
「船上でチェロを弾く」
アンソロジー集
「Heart Beat」(藤谷治「再会」収録)
J・K・ローリング
「ハリー・ポッターと賢者の石」


「再会」藤谷治 2012.02.15

この小説は「船に乗れ!」の続編というか、作中で触れられていなかったエピソードを切り出した短編で、 「HeartBeat」というアンソロジー集に収録されているものです。

主人公は長らく音楽高校時代の友人との再会を避けてきましたが、フランス在住のフルート奏者伊藤慧から来日リサイタルのチケットが送られてきたことを契機に、楽器を再び取り出し、伊藤慧とも再会の約束をします。 伊藤慧との再会、チェロとの再会、昔の自分との再会、が描かれています。 再会を通して、心を縛り付けていた鎖が徐々に解けていくようでした。 小説の最後、チェロを構えた自分のことを「今の私が、昔の自分を抱きしめていた」と描写した部分にジーンときました。


「船に乗れ!」藤谷治 2012.02.01

この小説は「船に乗れ! T合奏と協奏」「船に乗れ! U独奏」「船に乗れ! V合奏協奏曲」の三部作です。 「オケ老人!」をアマゾンでポチった時に「この本を買った人はこんな本も買っています」に表示されたことから、興味を持って図書館で借りてきました。 明るく陽気なフィクションの「オケ老人!」とは対極にあるようなお話でしたが、こちらの小説もとても面白く、泣きながら&鼻をかみながら3部作を一気読みしました。

この小説は、既に音楽を辞めてしまった主人公が回想する、音楽高校に通う若者達の青春物語。 音楽の楽しさ苦しさ、青春期の傲慢さ残酷さがたっぷり詰まったお話です。 チェロを学ぶ主人公は音楽を楽しんでいたけれど、プロと接することの多い恵まれた環境の中で自分の才能に限界を感じ、結局は音楽を辞めてしまう。 その主人公が、他者の人生の挫折・方向転換にも直接・間接に関わっていく。 登場人物は苦しんでいたけれど、読後感はさわやかでした。

この小説には私も薫陶を受けたかったと思うような先生が何人も登場します。 倫社の金窪先生、チェロの佐伯先生、メッツナー先生、ピアノの北島先生、そしておじいさま。 本当に主人公は恵まれた環境にありました。

音楽高校がどんなことを勉強しているのかがわかったのも面白かった。 音楽高校のオーケストラってハードですね。先生がめちゃくちゃ怖い。

さて、お気に入りキャラはフルートの伊藤慧。その天才と、切ない男心が胸キュンです。


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