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今月読んだ本 |  「隈取絵師」平茂寛

今月読んだ本 2013.04.30
平茂寛
「隈取絵師」

今月は、これ以上読書する気力が無かった…


「隈取絵師」平茂寛 2013.04.13

津山藩を舞台に、絵画を巡る陰謀を描いた小説。 元老中松平定信と津山藩主松平康孝と大奥とが絵師や寺僧らを手駒に陰謀を仕掛け合い、争います。

津山藩お抱えの隈取絵師鎌形恵斎は、定信の命を受け、盗み見た大奥の秘事を描いたが、その絵がいつの間にか盗まれてしまったという。 定信は、その絵を含む恵斎の絵が津山藩に悉く盗まれてしまったことを恵斎に告げ、秘事を巻き込んである職人絵詞ごと奪い返してくるよう命じる。 しかし、江戸在住の恵斎が津山藩まで出かける理由は無い。 折りよく、津山城の本丸御殿が火事で焼失したことから本丸御殿再建という一大事業が持ち上がる。 お抱え絵師として襖絵を書くため津山藩に向かう恵斎だったが、実は火事そのものが恵斎を津山藩に向かわせるために定信が仕掛けた企みだった―――

ブログのお友達で津山在住の方から、鎌形恵斎を主人公にした小説が去年歴史小説大賞を取って津山で話題になった、と教わり、この本を手にしました。 とても面白かった! ぐいぐいと小説の世界に引き込まれ、一気に読み終えてしまいました。

津山藩のお抱え絵師でありながら、定信の命に背くことができない事情のある恵斎。 絵の奪回か自らの命かを暗に迫られ仕方なく津山藩に向かう苦渋や、津山藩で狩野派のお抱え絵師から蔑まれながらプライドをかけて絵比べに立ち向かう姿がとても人間くさく共感持てました。 恵斎に肩入れしてハラハラしながら読み進めていったので、ラストの意趣返しで気分爽快!

鎌形恵斎の描いた「江戸一目図屏風」はスカイツリー展望台からの眺望と視点が一致すると言われており、スカイツリー開業後、改めて注目されているそうです。 この小説にも、江戸一目図屏風を描いているシーンがちょっぴり登場しますよ。


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