【望郷】

遙か異邦の國で空に浮かぶ月を眺め、今私を照らしているあの月は懐かしい生まれ故郷を照らしている月と同じなのだろうかと思う。見知らぬ土地で、見知らぬ人々中で。

同様に、静まり返った金波宮の露台で、雲海の上に冴え冴えと輝く小さな月を眺める。強い磯の香りをふくんだ海からの風に髪が煽られる。海上にのびる月の影。手摺りから身を乗り出し下をのぞき込むと暗い海底の底には尭天の明かりが小さくまたたいている。
私の友は、今どうしているだろうか、やはり学舎の窓から同じ月を眺めているのだろうか。同じ月が私と彼を照らしている。
異国の国で得た初めての友を想う。