【戦争を演じた神々達】著:大原まり子
             早川文庫

【戦争を演じた神々達】のなかから、【女と犬】
これは、この短編集のなかでも、最も私が、気に入っている話の一つです。元々、SFは好きなのですが、【戦争を演じた神々達】との題名通り、神話体系的、グロテスクで、残忍に美しい物語。
1話1話、宝石のようなきらめきを放つ物語は、糸でつながり複雑に絡み合っている。

「いつか、支えきれなくなる。どうやったって、やっていけなくなるよ。あなたの優しさにつけ込み、つけ込んでいることにさえ気づかない愚劣な甘えん坊の群に、押しつぶされるんだ……しかし、ここは暑いな」

「思い出したわ…私は試みに引きまわす…。じゅうぶんに優しいかどうか、そして、優しく振る舞えるだけの強さをふまえているかどうか…それを、ずっとずっと長い間…確かめているのよ」

「いったいぼくは、何万回くたばったことだろう。毎度毎度、ろくな死に方をしなかった。多くは殺された。そして、死ぬまでに多くを殺した…もう、飽き飽きだ。なんて、残忍で無惨なんだろう」

「…これは、裏切りの物語」

「人の手の優しさを信じないことの不幸よ…」

「…フゥ。最低の気分だ…なんで、生き返らせたの」

「愛しているから」