『サーーー』

(ん・・・雨・・・か?)

水音で眼が覚める。

(寒い・・・)

身震いしながら視線をエアコンに送ると、動作ランプが点いていた。

(・・・点けたっけ?・・・うたた寝してたか)

ベッドで横になった後の記憶が曖昧な事から、そう結論付ける。と、風呂場の灯りが付いている 事に気付く。水音もそこからだった。

(なんだ、霞澄がシャワー使ってたのか)

雨ではなかった事に何となく安心しつつ、身体を起こす。時計を見ると0時を回ろうとしていた。

(遅くなるって言ってたしな・・・まぁ、いいや。何か飲むか・・・)

冷房のせいで、喉の水気はすっかり無くなっていた。


 流しから夕飯に使ったグラスを取上げて水を貯め、そして捨てる。

(別に濯ぐ必要って・・・無いよなぁ)

数時間しか経っていない上、使ったのは自分。無駄な事をしたと感じ、少しだけ溜め息を漏らした。 気を取り直して、もう一度水を貯める。

『ガチャ・・・』

「あれ、兄さん?」

蛇口を閉じると同時に、左後ろから扉の開く音。それに続き霞澄の声が耳に入る。

「あぁ、おかえり」

顔を向けると、予想に反せずバスタオルを巻いた霞澄が居る訳だが、その顔は申し訳なさげな 表情を浮かべていた。

「もしかして・・・起こしちゃった?」

(あぁ、そう言う事か)

その表情の理由が分かり、どう返そうかと言葉を探す。率直に『シャワーの音』と言うのは気が引けた ので、

「いや、冷房が効き過ぎてたみたいでな」

「ああっ、最強にして忘れてた。ごめんなさい・・・」

2番目の理由にあった「冷房」の事を言うと、霞澄は思い出したように声を上げ、謝る。

(ありゃ・・・地雷踏んだか)

「イイって。しかし霞澄って、結構物忘れしやすいよな」

「それ結構気にしてるのに〜〜」

さっきまでショゲていたのは何処へやら。ふと漏らしてしまった一言に霞澄が突っかかって来る。

「そうだったか?まぁ、今度から気を付けてくれよ」

「む〜〜」

宥めるように言ったつもりだったが、むしろ逆効果だった。

(ハハ、むくれるのは相変わらずだな)

「ハイハイ。言い過ぎた」

内心は笑いながらも、飽きれた感じで謝ってやる。

「じゃ、一緒に飲も」

「ハ?なんで、そうなるんだ・・・」

唐突な申し出に素で返してしまい、霞澄に突っ込ませる隙を作ってしまった。

「悪いって思ったんなら、付き合ってくれてもイイと思うけどな〜」

目を細めてこちらを見る霞澄。攻守が逆転する。

(う・・・付き合ってやるか・・・)

「明日は休みだしな、付き合ってやるよ」

寝ようとも思ったが、収まりもつかないだろうと言う事で、仕方なく付き合う事にした。

「さっすが〜。そう来なくっちゃ♪」

(満面の笑みってのは、こんなのを言うのだろうな)

そう思ってしまう程に嬉しそうな笑顔。

「じゃ、出しとくわ」

「うん。すぐ行くね」

酒の準備を始める事にする。



「・・・で、よりによって、その格好はナニ?」

部屋に戻って来た霞澄が着ていたのは白のYシャツだけ。微妙に透ける肌色や裾から伸びる生脚とか、 目のやり場に困ってしまった。

「え?暑いから」

もっともな理由を言う。

「それ・・・俺のだよな」

そんな事を聞くまでも無く、サイズが大きすぎるのが目に見えて分かる。

「気にしない、気にしない。何枚もあるんだから」

無理矢理な感じで話を切り上げ、霞澄は缶の栓を開ける。

(俺のなんだな・・・まぁ、どうでも良い事か)

なってしまった事をとやかく言うのは嫌いなので、放って置く事にする。

「ぅん〜。お風呂上りの冷たい物って、気持ちいい〜」

(オヤジくさいな・・・)

言い方に違いこそあれ、そう思ってしまった。

(って言ったら、はたかれるな)

「そうだな」

内心を隠しながら軽く相槌を打つ。と、霞澄はおもむろに立ち上がって、

「兄さんも何か食べるよね?」

つまみをどうするか聞いてきた。

「あ〜、枝豆があったよな。それでいいよ」

晩飯の時に開けた冷蔵庫の中身を思い出して、唯一あったつまみを言う。

「は〜い」

と、延びた返事を残して、部屋を出て行った。ふとカレンダーが視界に入る。

(2年と・・・4ヶ月になるのか・・・)

急に一人になってしまうと、昔を思い出してしまうらしく、霞澄がここへ転がり込んできた時の事が 頭に浮かんでいた。

(昔を振り返るのも悪くないか・・・)

今日は、更に記憶を遡る事にした。



 俺と霞澄は兄妹と言っても、義理だ。俺が母の連れ子、そして、父の連れ子が霞澄だった。歳も そんなに離れていない事もあってか、すぐに良い兄妹になれたと思う。ただ、一つ問題があった。 それは、霞澄が母に懐かなかい事だった。

 結局、母と霞澄との間には溝が出来てしまったまま、俺が大学進学で家を出る時が来る。 この時、父は既に他界していたので、2人きりにして大丈夫なのか心配だった。たまに帰る事に すれば良いだろうと考えていたが、現実は甘くなく、そんな余裕は無かった。

 それからほぼ3年が経った学年末。一本の電話が入る。その頃殆ど掛けなくなっていた家の 番号、出ると母からだった。内容と言うか、いきなり言われたのが『霞澄をお願いね』との一言。 慌てて聞き返すと、進学先を俺の住む所の近くにし、『兄さんの所へ行く』と言って聞かなかった らしい。なんとも霞澄らしいと思った。

 俺の部屋に来て開口一番『えへ、来ちゃった♪』なんて、笑えとしか言いようのない恥ずかしい 台詞を口にする霞澄。まぁ、独り身の自分にとっては結構ありがたかった。特に食事面が・・・



「・・・さん」

「兄さん?」

霞澄の声で回想の中から意識を引き戻す。

「・・・どうした?」

「『どうした』じゃないよ。出来たよ枝豆」

目の前には枝豆が盛られた器。

「ん。ありがと」

「何か、考え事でもしてたの?」

早速食べ始めると、霞澄が聞いてきた。別に隠す事でもないので言う事にした。

「いや・・・霞澄がここに来てから、2年経ってんだなって」

「そうだね」

微笑みが言葉と一緒に返ってきた。別に何でも無い筈だが、思考が一瞬停まったような、そんな 気がした。



 他愛も無い話。と言っても、喋っていたのは半分以上俺。その結果なのか、飲み始めて20分も 経たない内に酔いどれが一人出来上がった。

「ぇへへ〜、兄っさん♪」

「うぁ」

甘えた声を出しつつ、俺の右腕に絡んでくる。いきなりの豹変振りに変な声を上げてしまった。

(わ、笑いと絡みの両方とは・・・タチが悪い)

そんな事を思いつつ、ふと霞澄の飲み跡を見遣る。実際350ml缶で2本も飲んでいない。

「あの量でどうやったらここまで酔えるんだ?」

「兄さ〜ん。大好き〜♪」

俺の問いには無視、と言うか、聞こえていない様子で、今度は背中から抱き付いて来た。

「んっ」

(か、感触が・・・)

しっかりと抱き付かれたため、胸が背中に当たる。加えて、乾ききっていない 髪から漂うシャンプーの香りが、鼻腔をくすぐっていた。

(・・・どうにかしないと)

すでに血流が頭と下腹部に偏り始めていた。加熱する頭で『少し驚かせれば落ち着くだろう』との 結論を見出し、実行する。

「もういい加減に、しろよ」

口調は優しく抑え、反対にモーションは大きく。

「え?キャッ!?」

身体を反対に向けて、畳んである布団へと霞澄を押し倒し、覆い被さるようなカタチを取る。

(ん・・・?)

動きが無いので、しばらく見つめ合う事になってしまった。

「何かリアクション無いの?」

状況に耐え兼ねて問い掛ける。

「・・・嫌じゃないから」

「冗談だろ?」

『・・・』

霞澄の返答を待つ。再び訪れる沈黙。

「・・・ ばか ・・・兄さんの鈍感」

弱々しく紡がれる一言。口元へ移っていた視線を目の方へ戻すと、霞澄の目には涙が滲んでいる ように見えた。

「・・・そう言われてもなぁ」

自覚していない事を突然言われ、返す言葉が無い。

「だって・・・何回も気持ち伝えようとしたのに・・・気付いてくれないんだもん」

「え?」

めまぐるしく巻き戻っていく記憶。そして、その中からいくつかのシーンがピックアップされる。

(あ・・・)

何でもなかった単なる記憶。けれど、その意味に気付いた今、それが鮮やかに色付いていくのが 分かった。

「心当たり有った?」

俺の表情が変わった事に気付いたらしい。

「あ、あぁ・・・有った・・・けど、その・・・なんだ、俺なんかでイイのか?」

「もう、兄さんしか見えないから・・・」

(あれ?なんで躊躇なんかしてるんだ・・・)

霞澄の答えを聞いて思う。自分の事を好きだと言う人が目の前に居るだけの事。ただそれだけ。

「そっか・・・だったら、応えないとな」

そう言って、霞澄の顔に自分の顔を近づける。霞澄の方も何をするか気付いたようで、ゆっくりと 瞳を閉じる。

「・・・」

唇が触れ合う。と、意外にも霞澄の方から舌を伸ばしてきた。少し驚きながらも舌を絡めていく。

「・・・ハァ」

霞澄の舌と口腔内をひとしきり堪能した所で唇を離す。数瞬引かれた銀糸が、気分を更に昂揚 させる。ただ、一方の霞澄は物足りなかったのか少し不満そうな表情だった。

「・・・」

笑いそうになったのを必死に堪え、次の行動へ。そのため、押し黙ったままYシャツのボタンを 外していく羽目に。

「ねぇ」

ボタンを全て外し終え、胸や腹が露になった所で霞澄が声を掛けてくる。

「ん?」

「・・・やっぱり男の人って、胸大きい方がイイの?」

”大きさにはそんなに興味無い”というのが持論。それをそのまま言うのもつまらないような気が したので、

「う〜ん、俺は・・・」

わざとらしく考える振りをしながら、素早く胸に口と手を運ぶ。そして、片方の先端を吸い、 舐めつつ、もう一方は親指と中指の腹で転がす。

「え?や・・・ぁはっ、くすぐったいよ〜」

最初は戸惑いつつも、感じている様子。最後に、口に含んでいる方は軽く噛み、指で責めている方は 力を少し強めた。すると、

「ひゃんっ」

体全体を跳ねさせて反応する。

(結構敏感かな・・・)

そう思うくらいに大きい反応だった。

「こんな風に感じてくれるなら、大きさは関係無いな」

「・・・えっち」

白々しく質問の答えを言うと、霞澄は目線を横に逸らせて呟く。お詫びの意味も込めて、もう一度 キスをする。

「んん・・・」

さっきと同じようなキス。けれど、今度は霞澄から唇を離そうとするまで続けてやる。

「ん〜、んん〜」

呻き声と俺の肩を押し上げようとする動作で、首を動かす余地が無い事に気付く。 が、それでも、ゆっくりとした動作で唇を離す。

「んぁ、ハァ・・・ハァ・・・やり過ぎ」

肩で息をしつつも、ハッキリと文句を言う。

「さっき不満そうな顔してたじゃないか。だ・か・ら」

「・・・もう」

再び目線を逸らせる霞澄。どうも図星だったらしく、さっきより顔の赤みが増していた。 その隙に今度は下腹部の方へ移動する。

「や、恥ずかしい・・・」

下腹部を隠そうとしてか、微かに腕が動く。が、既に力が入らないようでそれ以上動かなかった。

「可愛いよ、霞澄のココも」

言って、割れ目に指を這わせ、広げる。フニフニとした感触がとても心地良かった。 そして、人差し指を入れてみる。

「あん・・・はあ・・・」

中は熱く、充分すぎるほどに濡れていた。

「こんなに濡らして・・・霞澄もエッチだなぁ」

「・・・」

声が返って来ないので顔を上げると、霞澄は天井を見上げたまま何かを耐えるかのように、熱の 篭った呼吸を繰り返していた。そんな姿を見て、何故か『理性を飛ばしたい』と言う衝動が走る。

「・・・え?」

指を抜き、割れ目に口を付けると、違和感に気付いてか霞澄が声を上げる。それに構う事無く 貯まっている愛液を一気に吸いたてる。

「やっ、ああん」

わざと音を立てて吸い、それをまた中へ戻し、今度は舌で陰核を刺激する。これを何度も繰り返す。

「あん・・・ひぅっ、ああ・・・あんっ、ひん・・・」

部屋内は淫猥な水音と喘ぎ声、荒い呼吸音で一杯になる。

「あぁん・・・にい・・・おにいちゃん。もう、もうダメなのぉ・・・」

霞澄の理性が外れる。それに加えて、伏せていた内心が表に出てきた事を『おにいちゃん』と言う単語 で感じた。

「おにいちゃん・・・焦らさないで・・・入れて・・・おにいちゃんの、欲しい・・・」

愛撫を続けていると、ついに哀願してくるまでになっていた。

(やり・・・すぎた、な)

ちょっと反省しつつ、着ているTシャツとトランクスを脱ぐ。脚の間に入り、水浸しになった 割れ目へ分身の先を当てる。

「あぁ、初めて・・・だろ?」

聞くと、首を縦に振り頷く。

「んじゃ、ダメだって思ったら、言ってくれよ」

「うん」

返事を合図に腰を進め出す。

「ん・・・うぅ・・・」

入れた部分から内壁がピッタリと包み込んでくる。それでも、十分に濡れているため進み易かった。

(あ、膜・・・かな?)

程無くして、先端にそれらしきものが当たる。一呼吸置いてから、一気に押し込む。

「・・・んぐっ・・・んん!」

霞澄の表情が痛みにゆがむ。ただそれも少しの間だけで、すぐに戻った。

「霞澄のナカ、あったかいな」

「熱い・・・おにいちゃんの・・・」

俺の呟きに返事をし、続けて、

「もう・・・動いても・・・イイよ・・・」

と、動かそうか迷っていたのを知ってか知らずか、霞澄の方から言ってきた。



「なあ、どんな気分?」

霞澄の吐息に熱が篭もりだしたのを見計らって聞く。

「え?あっ・・・頭のっ、中が・・・真っ白」

途切れ途切れだが、素直に返してくれた。

「感じてる?」

今度は単刀直入に。

「う・・・ん・・・分か、あん・・・らない」

(どう見ても、感じている以外思えなかったりするんだけど・・・)

心の中で苦笑する。

「う〜ん、痛くはない?」

一番気になる事だった。が

「うん」

こちらの意図を察してか、笑顔で返事をしてきた。その表情に無理や我慢といったものは 一欠けらも見えなかった。

「違うのに変えてみるか」

そう言って、身体を密着させ背中に両手を回すと、

「え?・・・あ、何?」

霞澄が不思議そうな感じで聞いてきた。

「起こすだけ・・・よっと」

力を入れて、お互いの身体を起こす。そして、力を緩め、自分の下腹部に霞澄が座るようにする。

「んんっ!?」

「くっ!?」

「ぁぁん!!・・・・・・・・・んん」

分身の先端に何かが当たる感覚が走る。その直後、分身が締め付けられ、余りのきつさに苦鳴を もらしてしまう。一方の霞澄は、身体全体を反らし、声にならない声を上げる。

「ハァ、ハァ、ハァ・・・」

そして、頭を俺の肩に預けて、荒い息を繰り返す。

「・・・どうした?」

「お、奥に、当たったと・・・思ったら・・・頭の中・・・白いのが・・・急に広がって・・・ それで」

何だったのかを聞くと、息も絶え絶えにその時の様子を伝えてくる。

「そっか、奥は刺激が強すぎたな」

言って霞澄を持ち上げ、膝を立てて奥まで行かないようにしてやる。

「今度はどうかな」

霞澄の内壁をゆっくり抉るように動かす。

「ひぁっ!んあっ!」

鋭い喘ぎ声と共に分身が軽く締め付けられる。

「あぁん・・・おにいちゃんの・・・ぃやんっナカで・・・こすれて・・・」

「気持ちイイ?」

「う、ん・・・イイの・・・おにいちゃんの・・・気持ち、イイよ」

誘導としか考えられないような問いでも従順に返してくれる霞澄。

(もう一回してもらおうかな・・・って、本人の意思じゃないけど・・・)

ゆっくりとした動作を繰り返す中、そんな姿を見て、さっきの強い締め付けが欲しくなった。

「もう一回やるよ?」

「え?」

霞澄が聞き返すのを無視して、抜けない程度に身体を持ち上げる。次いで、立てていた膝をあぐらの 出来損ないみたいに畳む。そこで俺の意図に気付いたらしく、

「やっ、ダメッ!」

と、焦った声を上げる。それに加えて、手足に力を入れようとしているのが分かった。が、腰を 支えている力を緩めると重力にすら耐えられずその身体が落ちた。

「ひゃあっ!」

2度目の衝撃。そして続く収縮感。

「ん・・・」

「ぁあ!んぐぅ・・・うぁぁ・・・・・・うん・・・」

霞澄はさっきと同じように、身体を反らせ、声にならない声を上げる。今度はそのまま後ろへ倒れ そうになったので、慌てて腕を取り、支えてやる。

「ハァ、ハァ、ハァ・・・」

「イイよ霞澄」

「んん・・・おにい・・・ちゃん・・・の・・・いじ・・・わるぅ・・・」

良かった事を言うと、まだ収まらない息のままで抗議してくる。

(あ〜、やっぱやり過ぎたか)

俺の方も少し疲れてきたので、とりあえず霞澄の身体を横にさせる。

「少し休憩する?」

「ううん、だって・・・おにいちゃん、まだ・・・」

首を横に振り、ようやく落ち着いてきた声で俺がまだイってない事に触れる。

(休憩したかったけど・・・まぁ、こう言ってるしな)

「そうまで言うなら・・・」

体勢を変える為に一回分身を抜く。

「あ・・・」

呻き声と共に、溜まっていた愛液が流れ出す。それをまじまじと見ていると、

「んん・・・いやぁ・・・」

羞恥心で一杯になった声が上がる。余り責め過ぎるのもかわいそうになってきたので、次へ。

「きゃぅ!?」

両脚をいきなり持ち上げたので驚きの声が上がる。そして、持ち上げた両脚はそれぞれ肩へ乗せ、 再び分身を挿入する。

「んん・・・あんっ・・・ああん・・・んっ・・・んっ」

ゆっくりと腰を動かし始めると、霞澄の甘い喘ぎ声が耳を撫でて行く。

「あ・・・んあっ・・・はぁん・・・ぅあっ!」

何回か往復していると、吐息も熱く激しくなってきていた。

「・・・お、おにいちゃん・・・もう・・・もう、イキそう・・・」

伏せていた目を薄くあけて訴えてくる。

「俺もイキそうだ」

「うん・・・ナカ、で・・・イイよ・・・」

真っ直ぐにこっちを見る。

「ああ」

これを合図に、スパートをかけるべく徐々にスピードを上げ始める。

「あん、あっ、あんっ、んんっ、んっ、ああぁ!」

喘ぎ声に鋭さが混ざる。

「んは!ああっ!んっ!んっ!んあっ!くるっ!くるよぉ!!」

最後に奥底の更に奥を目掛けて突き込む。

「んぐっ・・・ぁぁあああんっ」

「霞澄っ!」

収縮が最高潮を迎えると同時に、抑えに抑えていた射精感を一気に開放する。

「・・・・・・・・・んぅ、ハァ、ハァ、ハァ・・・」

「霞澄?」

硬直が解けた所で呼び掛ける。

「ハァ・・・ハァ・・・」

目を伏せたまま返事は無く、肩で息をし続けていた。

(飛んだ・・・か、無理もないよな。初めての上に3回だったし・・・)

とりあえず、萎え始めた分身を抜いて、一息。割れ目から溢れ出る粘液を拭き取ってやりながら、 気長に待つ事にした。



「う・・・ん」

数分後。呻き声の後、両目がゆっくりと開かれる。

「あ・・・れ?」

首を巡らせて、周りを見る霞澄。

「ん、おかえり」

「・・・ふぇ?・・・私・・・」

声を掛けてやる。が、まだ現状が分かってないようだった。

「意識、飛んでたみたいだな」

「そう・・・なの?」

ここまで言っても飲み込めてないらしい。

「それじゃ、どこまで憶えてる?」

そう言うと、困ったような顔をして、

「えっと・・・う〜ん・・・」

と、記憶を探ってるようだった。

「思い出せないくらい気持ち良かった?」

「・・・うん」

意地悪で聞いたつもりが、素直に頷いてくれたせいで笑いが込み上げてくる。

「・・・もう、にやにやしないでよ」

「はは、悪い悪い」

笑いを抑えていたはずが、表情に出てしまっていたらしい。

「さてと、もう一回風呂入るか」

分が悪くなってきた事への逃げの意味も含めて、汗を流そうと立ち上がる。

「あ、兄さん。私も入る〜」

(別に構わないか)

霞澄の発言を特に気にする事も無く、歩を進める。

「あ、あれ?足が・・・」

焦った声に振り向くと、足元が定まらない霞澄の姿があった。

「お、おい・・・」

「わっ!」

『大丈夫か?』と続けようとするのを遮り、バランスを崩して勢い良くこっちへ倒れこんでくる。

「うぉ!」

何とか受け止めるも、しっかりとタックルを喰らわされる。

「あ〜ゴメン、兄さん」

悪びれた様子も無く、こっちを窺う。

「ったく・・・こんなオチかよ・・・」

悪態をつきながら、再び風呂へ向かう。

「気にしない、気にしない」

霞澄が微笑みながら俺の背中を押す。

「まぁ、そんなもんか・・・」

「そうそう、早く入ろ♪」



 不意に知った光の存在。それはとても近くて、近すぎるからこそ見えなくて。

 感じ取れていたはずの温もりは、多分『兄妹』という言葉に掻き消されていたのだろう。

 そう今は思う。

 近すぎて逆に見えない・・・気付けたから言える事・・・。





終わりに