同窓生だより

『4年間を振り返って』

岡山大学医学部保健学科検査技術科学専攻  井上 靖朗

 この四年間は日にちで言うと365×4+1=1461日でした。数字だけで見るならとても長い時間のように思えるが実際に過ごしてみると、あっという間でした。小学校6年間、中高3年間ずつと比べても圧倒的に短かったように感じます。入った当初は誰一人わかる人がおらず一抹の不安を覚えました。サークルに講義を決め講義日程を立てる。どれをとってもかなりの自由を与えられましたが、その反面どうしていいかわからず困ったものです。それも大学生活を過ごしていく中ですぐに友達ができ、その友達や、先輩に聞きやっていく中で徐々に慣れていき、大学生活という自由な時間が多い生活にも徐々になれていきました。
 1年の時はまだ専門科目も少なく、鹿田キャンパスに来て同じ専攻の人と会うことも少なく顔が覚えることができませんでした。それでも何度も顔を合わす間に少しずつ覚えていきました。検査専攻の男子は人数が少なかったのですぐに覚え、人数が少ないこともあってかすぐに打ち解けることができたと思います。
 2年のときには、実習も少しずつ始まり、同じ専攻の人たちと毎日のように顔を合わせ、実習の班の人たちとも少しずつ仲良くなり、また助け合いながら一つ一つの実習をこなしていきました。また講義のことや実習中だけでなく、レポートの内容がよくわからなければ連絡を取り合い、どう書けばいいのか、またどうしてこんな結果になったのかを一緒に考え、作り上げていった時もありました。
 3年のときは、いよいよ将来実際に使う実習である生理検査に関することや、血液、組織、細胞診断学が始まり、より一層気を引き締め、友達同士でやるとはいえ、どのような原理があり、どのように検査を行っていけばよいのかを考えながら実習を行いました。その中で自分が何に一番興味を持ち、仕事に就いた時にはその興味あることを中心にやりたいと考えながら、興味のある検査については特に力を入れて勉強したこともありました。そして得意不得意は皆あるので、一人で勉強するのではなく、分かる人になぜそうなるのかを聞きながら、ともに知識を深めていったことも懐かしく、また大切な思い出の一つとなっています。
 4年のときには、ついに勉強してきたことの集大成とも言える病院実習、そして先生方にサポートしていただきながらの卒業論文。病院実習では実際に患者さんが目の前にいることもあり、隣り合わせのようなものだったので、常に緊張の連続でした。しかし将来一人でこれらのことをやると思うと、本当にできるのかと不安になりながらも、技師さんの話を聞き、もっと勉強しなければならないと燃えたものです。卒業論文では一人、もしくは同じ研究室の友達と実験をしていき、どうなるかを予想し、なぜ結果がそうなったのかを話し合い、合理的に考えました。そして周りを納得させられるように表現方法や、先に出ている論文を読みより確実な、そして説得力のある論文を書こうと頑張りました。もちろん先生方からみればまだまだ稚拙なものですが、私たちは自分で考え、それを言葉で表現し周りに理解してもらうことがどれほど難しいものなのかを理解することができました。また問題解決をするためのアプローチの一つを学ぶことができ、これからの人生でずっと役に立つものになったと自負しています。
 長々と書いてきましたが、4年間感じたこと、ためになったことを伝えるには、私の表現力がまだまだ未熟なので伝えきることができません。しかしこれだけは言えます。私はこの検査専攻に入学でき心からよかったです。友達はきさくで面白い人や、優しく面倒見がいい人など多くの自分を成長させてくれる、また助けてくれる人々に出会えました。そして丁寧にそして一生懸命に難しい専門教育を施してくれる先生方とも出会え、本当に楽しく、充実したものでした。

『4年間を振り返って』

岡山大学医学部保健学科検査技術科学専攻  本城 舞子

 この原稿を書くにあたり与えられた「四年間を振り返る」というテーマに対して、私がまず最初に思ったことは「長いようで短い五年間だったな」だった。自分のミスが原因で留年し、私は岡山大学に五年間在籍することとなった。留年を告げられた日のことは、三年が経った今でも鮮明に思い出せる。ひとの身体はこんなにも震えることができるのかと思うくらい、凄まじい震えだった。
 私は大学に入学する前から、臨床検査技師という職業に対し、強い憧れと希望を抱いていた。しかし専門的な分野に憧れていた私にとって、はじめの二年間の基礎的分野の学習は、そのほとんどがあまり面白いものではなかった。今になって悔やんでもどうもならないが、おろそかにして取り残してきたものが、二年間の中には山ほどある。
 そんな私の姿勢を変えるきっかけになったのが、先に述べた留年という衝撃的な出来事だった。一年間アルバイト尽くしの、ほとんどフリーターのような生活を送った。留年が決まる前に保健学科学生会の会長に立候補していたことがひとつの救いとなり、まったく大学に来ないという生活にこそならなかったものの、生活の中心は明らかにアルバイトになっていた。結果的に一年間という時間は、目指すものに向けての勉強ができない辛さを私に知らしめてくれた。三年生になったら、思い切り勉強しよう。そう心に決めて、私はようやく春を迎えた。
 めでたく三年生に進級し、臨床検査技師になりたいという思いは以前と変わらずに、しかし勉強に対する意欲は確実に変わっていた。空白の時間ができたことで、大学に在学する期間がいかにかけがえのないものであるかということに、私はようやく気付くことができたのだと思う。幸か不幸か、学生会の会長も二年連続で勤めることができた。何か大きなことを成し遂げたのかと問われれば情けないことに目立つ仕事は完遂できてはいないのだが、縁の下の小人として少しばかり鹿田キャンパスの動きに関わらせていただいたということだけ、私の思い出として記しておきたい。
 通して思い返せば、やはり私にとっては長いようで短い、あっという間の五年間だった。自分が五つ歳をとったことが未だに信じられない。しかし実家に帰省すれば、私を育ててきてくれた祖父母の頭はほとんどが白髪に変わり、腰が曲がって背は随分と低くなっている。私があっという間に感じているというだけで、本当は長い五年間だったのだ。
長かったこの時間に相応しいだけの働きが、社会に出た私にできるのかは、まだ分からない。それでもこうして振り返ってみても決して無駄ではなかった大学生という時間を、そして経験を、今度は臨床検査技師として働く私の力に変えていきたい。
よお頑張ったなぁ。電話越しの祖母の声を聞きながら、私は今そう思っている。

 

『卒後1年』


三宅 雅之(岡山大学病院)


 思い返せば一年前,私は臨床検査技師として病院で働く事を目標に国家試験の勉強をし,就職試験を受けていました。昨年,大学生の就職率が低迷しているというニュースをよく耳にしましたが,私自身も国家試験の直前まで内定がもらえず大変焦った記憶があります。
大学を卒業してから一年,私は今大学病院の検査部で新人配置前研修をしています。この研修で,一年かけて検査部すべての部屋を回りつつ全分野の基礎を学んでいますが,まだまだわからないことが多いので学生時代の教科書やノートを読み返すことが多々あります。さらに勉強会やセミナーがあれば参加をしており,今でも勉強を続ける毎日です。
この4月からは研修が終わり,一つの部屋に配属が決まります。そのため,これからは専門性を高める事を一つの目標にしています。また大学病院は研究もしているため,専門性を高める事の延長に研究を行えたら,と夢を見ています。

                          <卒後10年>

                                           刀禰 美那子


 顕微受精を始めた頃、思った。
卵子は結構タフだな。針でブスッと刺され強引に精子を入れられるのに文句を言わないし上手くいけば受精する。私があんなにも針で刺されたらきっと気絶する。

胚凍結を始めた頃、思った。
液体窒素の中は寒かろうに。私は液体窒素の中には入れない。やけどする。

胚はお喋りしてくれない。
この方法は苦しいの?平気なの? ……聞けたらいいのに

卒後10年の文章を書いてと言われたので、就職したての頃を思い出してみた。
私が就職したのは不妊治療専門のクリニックで、現在は新たな職場で胚培養士として生殖補助医療に携わっている。日々の業務に追われて忘れていたけど、胚の気持ちをよく想像していたことを思い出した。たぶんちょっと変わり者だった。でも変わり者なりに、いろんな操作が上手くできるようになりたくて頑張っていたと思う。
10年続けてきたけれど、私はまだまだ理想の胚培養士にはなれていない。初心に返って胚の気持ちを想像するところから、もう10年続けられたらと思う。

 


<岡山大学医学部保健学科検査技術科学専攻9期生卒業研究テ−マ>


【H21年度 前期】

1. 胸腺腫各種の免疫組織化学的対比 病理形態学(高橋先生)
岡本磨奈美 高橋由佳
2. 全身スーツのアシスト機能の評価〜姿勢と筋活動に着目して〜 生体情報解析学(岡先生)
井上靖朗 土居静佳
3. マウス膝関節腔へのelectroporationによる遺伝子導入条件の検討 臨床病理学(草地先生)
平川雄貴
4. ADAMTS1knock out mouseの解析 臨床病理学(草地先生)
美野愛
5. 実験的マウス大動脈瘤進展に関連する遺伝子:リアルタイムPCRによる検討 臨床病理学(草地先生)
小林謙司
6. 膜伸展メカノセンサーTRPV2は細胞の移動に関与するのか? 医療保健情報学(池田先生)
谷口琴音
7. EHD3による細胞運動の制御 医療保健情報学(池田先生)
佐藤美和
8. 一次PCRに多数のプライマーを使用したone-tube nested PCRの検討 ウイルス学(荒尾先生)
池田千将 片山大奨
9. 精油の抗アレルギー作用の解明〜気管支喘息モデルマウスを用いて〜 血液検査学(柴倉先生)
金井美友 三宅彩香
10. 好酸球マーカー検出法の検討 −MBPとEDNについて− 生体機能学(片岡先生)
上田彩未 多田加奈 平松唯
11. ブロムクレゾールグリーン法を用いた血清アルブミン測定における界面活性剤の検討 病態化学解析学(臼井先生)
中川莉沙 山本沙妃
12. 唾液NGF定量における唾液採取用具の影響 遺伝子解析学(石川先生)
小合泉 松岡夕希子
13. Helicobacter pyloriの除菌後再感染菌の検討 病原細菌学(横田先生)
西田菜々
14. 成熟FcγRUB欠損マウスの神経細胞におけるNF-κB活性化の亢進 高次機能解析学(岡本先生)
千頭祐一 塩月真理子


【H21年度 後期】
15. 健全なヒトの唾液に排出されるヒトヘルペスウイルス6型とトルクテノウイルスの量的安全性について ウイルス学(荒尾先生)
青野江里子 萩美穂子
16. 胸腺のマクロファージと他臓器のマクロファージの免疫組織化学的対比 病理形態学(高橋先生)
福本麻里奈 吉岡麻衣
17. B3型胸腺腫の亜分類の試み 病理形態学(高橋先生)
生駒久美子
18. ADAMTS1 Knockout mouseの解析 臨床病理学(草地先生)
陰山友希
19. Arylsulfatase Aの新しい機能の解析 臨床病理学(草地先生)
津郷幸子
20. ヒアルロン酸結合タンパク質による動脈硬化巣の検出 臨床病理学(草地先生)
谷口美由香
21. 精油の抗アレルギー作用の解明・続報 〜気管支喘息モデルマウスを用いて〜 血液検査学(柴倉先生)
鍛冶屋博子 近藤亜佑美
22. 音楽刺激による唾液NGF濃度の至適誘導時間の検討 ―ローラーコットンを用いた場合― 遺伝子解析学(石川先生)
岡本真奈 下宮広子
23. マウス肺癌モデルにおける血液成分濃度の変化について 遺伝子解析学(石川先生)
芦田悠里衣
24. マクロファージ活性化による上皮細胞間接着への影響 病原細菌学(横田先生)
森唯 本城舞子
25. Helicobacter pylori抗原刺激による末梢血マクロファージの反応性の検討 病原細菌学(横田先生)
中原恵理
26. Dynamin阻害剤であるDynasoreの類似体におけるアクチン重合阻害効果の検討
     〜抗がん剤の開発に向けて〜
医療保健情報学(池田先生)
安部由貴子 尼子知美
27. 成長円錐糸状仮足におけるCortactinのPKCαによるリン酸化制御の可能性 医療保健情報学(池田先生)
勢井麻梨
28. 全身スーツのアシスト機能の評価 〜昇段動作に着目して〜 生体情報解析学(岡先生)
江川綾香 志賀亜沙美
29. 酸化縮合反応を用いた血清パラオキソナーゼ活性測定の検討 病態化学解析学(臼井先生)
洪水志帆理 横溝久美
30. 呼吸器検体からの好中球マーカー検出法の検討 生体機能学(片岡先生)
筧彩佳 須山範子 永戸陽子
31. fNIRSでみられる酸素化ヘモグロビン低周波変動の要因に関する研究 高次機能解析学(岡本先生)
平田直也


〈岡山大学医学部保健学科検査技術科学専攻 8期生 就職・進路状況〉


 進 学 (8名)

岡山大学大学院保健学研究科修士課程
加計学園細胞病理学研究所
大阪大学大学院
近畿大学大学院総合理工研究科

就 職 (32名)
   
 岡山大学病院
 倉敷中央病院
 岡山県職
岡山済生会総合病院
 岡山中央病院
   岡山赤十字病院
 倉敷第一病院
 国立病院機構中国ブロック(呉医療センター)     
 今村病院(鹿児島県)
 愛媛大学付属病院
 大阪暁明館病院
 香川回生病院
 香川県職(香川県立中央病院)
  関西労災病院(兵庫)
 近畿大学付属病院
  島根県職(島根県立中央病院)
 神鋼病院(神戸)
徳島博愛記念病院
 兵庫県臨床検査研究所
   福島生協病院(広島市)
 福山市職員(福山市民病院)
 松山市民病院
三豊総合病院
      聖マリア病院(福岡)
大阪厚生年金病院
       日赤和歌山医療センター
 


〈岡山大学大学院保健学研究科 就職・進路状況〉

 

岡山大学病院 
ユニチャーム株式会社
大山病院(兵庫)
岡山大学病理(技術補佐、パート)
岡大院保健学研究科(博士課程進学)
香川県立保健医療大(助教)
オリエンタル酵母株式会社(東京)
桐和会(東京)

 



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