同窓生だより

『4年間を振り返って』
岡山大学医学部保健学科検査技術科学専攻 守谷祥代
 


もうすぐ4年間の大学生活が終わろうとしています。この4年間を振り返ってみると、とても充実した楽しい日々であったと思います。

 学校生活では、授業で基本的な知識を学び、実験・実習で臨床検査技師として必要な技術を得ることができました。私が特に印象に残っているのは解剖の実習です。実習では、私たちの学習のために善意で提供してくださった方のご献体を半年間かけて解剖させていただきました。実際に体の構造やしくみを目にし、触って感じることは、教科書を見て勉強するときより何倍もたくさんのことを吸収することができました。このときに学んだことは、決して忘れることはなく、これから勉強していくうえで、さらに臨床検査技師として働いていくうえで必ず生かしていかなければいけないと思います。検査技術科学専攻でありながら、実際に解剖をさせていただけるというのは、他の大学ではなかなか経験できることではなく、そのような貴重な経験をさせていただけたということは、私たちにとって非常に幸せなことです。献体を提供してくださった方、そのご家族の方には本当に感謝しなければならないと思います。また、岡山大学付属病院での実習では、実際に臨床検査技師の方が働いている現場を見ることができ、検査のお手伝いもさせていただきました。患者様の検体を検査することの責任がどれだけ重いかということ、これからまだまだ勉強しなければいけないことがたくさんあることを実感しました。

 部活動では、アーチェリー部に所属し、3回生のときには女子キャプテンとして頑張ってきました。その為、練習中はもちろん、試合中でも自分のことだけでなく、他の部員のことも気にかけなければなりません。また、団体戦では、チームを盛り上げるために、自分の点数が悪く悲しくても、そんな顔を見せるわけにはいけないなど、悩むことやつらいと感じることもたくさんありました。しかし、そのようなときにも周りの人たちに支えられて、乗り切ることができ、自分を支えてくれる人たちが周りにどれだけたくさんいて、それがどんなに幸せなことであるか、その人たちが自分にとってどれだけ大切かということを実感しました。部活動というのは、年齢も様々で考え方もそれぞれ違う部員が、ひとつの団体として活動していかなければならず、それは簡単なことではありません。しかし、様々な問題を解決していくなかで、規則を守ることの大切さや、他の人を大切にするということ、協力することの大切さなどたくさんのことを学び、様々な経験することができました。部活動で学んだことは、普段の生活ではなかなか経験できないことばかりで、これから社会に出て働いていく上でも、十分に生かしていきたいです。授業もあり、部活動に参加することはとても大変でしたが、4年間続けることができて本当によかったと思います。

 この4年間、楽しいこと、うれしいこと、つらいこと、たくさんのことがありましたが、岡山大学で学ぶことができ、本当に幸せでした。これまで、私たちのことを考え、指導してくださった先生方、一緒にがんばってきた友達、私のことを支えてくれた家族、そして出会ってきた全てのみなさまに感謝の気持ちでいっぱいです。卒業後は、臨床検査技師として働くことになりますが、4年間学んできたことを生かし、常に新しいことを勉強し続けていく気持ちを大切にし、がんばっていきたいと思います。


<卒後10年>
松田 広美


 友人から、「卒後10年」の記事を書いてくれないかという連絡をもらって、今まで前だけを見て突っ走ってきた私には、あれからもう10年も経ってしまったのかと改めて感慨深いものがあった。
私が卒業した平成11年は就職超氷河期で、卒業式の日になってもまだ就職の決まっていないダメな学生だった私は今、産婦人科クリニックで、不妊治療に携わる胚培養士として勤務している。
人間の根源となる受精卵に、年間100例以上向き合う責任は大変重く、激務も続いているが、赤ちゃんが欲しいと願う患者様の気持ちに応えられるよう努力する毎日は、とても充実している。学生の頃に思い描いていた10年後の自分とは全く違っていたが、今はこの仕事に出会えて本当に良かったと思っている。
これからも、学生の時に学んだ精神を忘れず、患者様の気持ちを常に考えながら、自己の限界よりもさらに上を目指して、進歩し続ける自分でありたいと思っている。

<卒後20年>
『卒後20年―予想外な人生? それとも...―』
浅沼浩子


 なぜ『臨床検査技師』を志したのか?と聞かれると正直困ってしまう(笑)。というのも、おや?こんな職業があるのか−と知ったのは実は高校3年になってからであった。ずっと以前から『絶対にこの職業に就いてやる〜』という情熱は残念ながらなかったものの、基本的に人前が苦手であった私は試験管を相手にコツコツ仕事をするという点にはちょっと興味があった。最終的には合格した学校の中から金銭的な問題も含めて選んだ道でもあった(いゃ〜、臨床検査技師学校の学費は安かった−)。そんなこんなで検査技師学校生にはなったものの、不思議と後悔はなかった。
岡山県民でありながらそれまで倉敷駅で降りたこともなかった私が、夏休みの実習先でもあった倉敷成人病センターに就職することになり、化学・血清検査を中心にやってきたが最初から必死だった...(笑)。当時はまだ当院検査部も用手法が多く、検体が来る度に試験管を並べては恒温槽で反応させて比色したものである。手の遅さは足で補うしかない!と思っていた私は、ひたすら走り続け、あっという間に5年間が過ぎていた。足が浮腫むことはあっても決して太ることはなかった(!?)。
26歳の時、シンガポールの関連クリニックへ短期出張に行くことになり(英語もろくに話せないのにある意味無謀...)、そこで日本人スタッフだけでなく、中国人、マレーシア人スタッフと共に働き、狭かった視界が一挙に広がった。文化の違うさまざまな人種の中でお互いを尊重し合い、いかに協力しながら働くか。当時数年単位で派遣されていた先輩達の労力に脱帽し、自分がちっぽけな人間であることを悟った貴重な経験でもあった。
私の検査技師人生に大きく影響しているDrがいる。当院リウマチ科の宮脇昌二先生である。岡山大学で講師もしておられたが、残念なことに私達14期生はちょうど教えてもらう機会を逃した。しかし当院に勤務されることになり、縁あって(?)私が抗核抗体関連の検査を担当することになり、その分野にド素人であった私に、嫌な顔をすること無く検査法から学会発表まで細かく指導してくださった。精神的、肉体的疲労から下血してしまった時の『入院しろ−、ワシが代わりにやってやる!』には正直泣けた。厳しさの奥に付き合った者にしかわからない独特の優しさもお持ちになり、我々検査技師の発展を願う良き理解者の1人でもあられる。出逢えたことに感謝したい。
勤務して20年以上が経ったが、20年前に今の私は全く想像できなかった。今ここに検査技師の道を歩かせてもらえているのも、ご指導してくださった先輩方や支えてくれたかけがえのない同僚のおかげだと感謝している。最近私の尊敬する祖父が、『人生、その道に行けばそれなりの道が開ける』と生前言っていたことをよく思す。たまたま進んだ道のようでもあるが、そうではなかったのかも、と思う時もある。私が検査技師になった年に生まれた従妹の子供が、今、検査技師を目指して勉強している。それを聞いた時にちょっとうれしかったのが答えなのかもしれない。

 

<卒後30年>
石倉 寛子


卒業して30年。30年もの間であれば誰でも心が凍るようなことは一度や二度はあることと思います。私もどうして?何でこんなことが・・・と、途方に暮れる様なことが何度かありました。そんな時、力になってくれたり、励ましてくれたのは、先に辞められていった多くの先輩方、たくさんのことを教えて下さり公私にわたりお世話になった真田先生、同僚、他の病院の技師の方々、そして家族でした。私のようなものでも今まで仕事を続けてこれたのはこれらの方々のお陰と本当に感謝しています。

30年の間には検査業務の内容はもちろんのこと、検査に求められるものも大きく変わり、これもグローバルな時代と自分を納得させています。自分の子供と同じ年のスタッフに助けられながら、教えることはできなくても共に学ぶことはできると信じて毎日こつこつと仕事をしています。派手なパフォーマンスは目立って注目を浴びますが、当たり前なことを普通にすることに心を砕きながら、この3年ほどは毎日顕微鏡を覗いています。それが自分を育ててくれた方々への御礼だと考えながら・・・。、競い合い高めあうのではなく許し合い認め合うことを心に詰め込んで、仕事ができることを感謝しながらあともう少し頑張ろうと思っています。

 


〈岡山大学医学部保健学科検査技術科学専攻 7期生 卒業研究テーマ〉


【H20年度 前期】

1.音楽刺激により誘導される新たな唾液タンパク質の検討 遺伝子解析学(石川先生)
富田可奈子 山崎友奨
2.ペリニューロナルネットにおけるBral 2の役割 臨床病理学(草地先生)
斎藤麻衣
3.軟骨基質標的化を目的とするN-TIMP3リコンビナントタンパク質の発現と精製 臨床病理学(草地先生)
内仲彩子
4.病原遺伝子ノックアウトHelicobacter pyloriによる培養細胞からのサイトカイン分泌能の検討 病原細菌学(横田先生)
中家歩美
5.胃粘膜萎縮とHelicobacter pylori病原遺伝子の関連性の検討 病原細菌学(横田先生)
井川真希
6.呼吸負荷中の圧脈波波形変化の原因解析−呼吸量変化と自律神経変化の影響について− 生体情報解析学(岡先生)
石井裕子
7.多点計測のための変位MMGラインセンサの開発−センサの基礎特性と筋音図潜時の測定− 生体情報解析学(岡先生)
格清麻友子
8.胸腺皮質に存在する樹状マクロファージと毛細血管との関係 病理形態学(高橋先生)
北浦実奈 三浦友紀江
9.人工ヒト化抗体産生細胞(6E6細胞)の抗体産生に対する糖添加の効果 ウイルス学(荒尾先生)
柴田千恵子
10.糖による遺伝子発現促進機構の研究 ウイルス学(荒尾先生)
杤木達也
11.Paraoxonase1と冠動脈疾患の関係 病態化学解析学(臼井先生)
中村浩充 西元由喜
12.呼気凝縮液(EBC)中のロイコトリエン(cysLT)の抽出 生体機能学(片岡先生)
大石彩加 小林加奈
13.Dynamin阻害剤Dynasoreの類似体におけるアクチン重合阻害効果の検討 医療保健情報学(池田先生)
井村仁美 和田真紀
14.ヒトLDLの2-DEによる検出の試み 臨床化学検査学(一村先生)
冨谷啓子 難波恵莉
15.急性移植片対宿主病におけるセレクチンの役割 血液検査学(柴倉先生)
高橋恵子 星野友香
16.FcγRUB受容体欠損は、parvalbmin neuron の発現を遅らせる 高次機能解析学(岡本先生)
水原賢 斉藤慎哉



【H20年度 後期】

17.ADAMTS1の腫瘍血管新生における効果の検討 臨床病理学(草地先生)
岡茉由子
18.血管形成術後再狭窄モデルにおけるα6(W)鎖の役割 臨床病理学(草地先生)
中島美佳
19.緑色蛍光タンパク質で標識したR8ペプチドの軟骨基質集積能 臨床病理学(草地先生)
松田枝里子
20.培養条件下でのTCDMの性状−組織におけるTCDMとの比較− 病理形態学(高橋先生)
祇園由佳
21.ウイルスプロモーターで制御された遺伝子発現に対する糖鎖の促進効果 ウイルス学(荒尾先生)
金本貴之 蔵田綾 
22.AIxの変化に影響を与える要因の検討 [胸腔圧・腹腔圧の影響] 生体情報解析学(岡先生)
大野佑子
23.変位筋音図の発生機序に関する研究−超音波診断装置で観察した骨格筋の収縮様相− 生体情報解析学(岡先生)
越智美保子
24.変位筋音図を用いた骨格筋の疲労評価−高強度等尺性随意収縮を行った場合− 生体情報解析学(岡先生)
石井圭
25.Dynamin 阻害剤Dynasore類似体のアクチン重合阻害効果:新規な抗がん剤の開発に向けて 医療保健情報学(池田先生)
難波千晴 村口佳史
26.HDL中に含まれるApoE-AUヘテロダイマー測定の基礎的検討 病態化学解析学(臼井先生)
森本菜津美 吉武みゆき
27.音刺激は音楽刺激の代用になるのか 遺伝子解析学(石川先生)
杉浦英祐 出口浩嗣
28.呼気凝縮液中のDNAの検出 生体機能学(片岡先生)
土岐美沙子 原法子
29.呼気凝縮液中のECP m-RNAの検出 生体機能学(片岡先生)
平尾かおり
30.大脳皮質ニューロンにおけるFc受容体の発現 高次機能解析学(岡本先生)
日野浩美 松岡祥子
31.ボツリヌス神経毒素検出イムノクロマトグラフィーの開発 病原細菌学(横田先生)
日下咲季
32.HSP60が関与する動脈硬化の評価系の確立 病原細菌学(横田先生)
大里絵美
33.H.pylori感染による末梢血リンパ球の反応性の研究 病原細菌学(横田先生)
小林亜紗子
34.T細胞機能におけるセレクチンの役割 血液検査学(柴倉先生)
杉山美貴 守谷祥代


〈岡山大学医学部保健学科検査技術科学専攻 6期生 就職・進路状況〉


 進 学 (2名)

 岡山大学大学院保健学研究科修士課程
神戸総合医療専門学校(臨床工学専攻)

  就 職 (31名)

JA尾道総合病院
赤磐医師会病院
英ウイメンズクリニック
大阪府立病院機構
岡山済生会総合病院
岡山市立市民病院
岡山大学病院
岡山中央病院
花王(株)
香川済生会病院
教員共済中国中央病院
京都第二赤十字病院
倉敷記念病院
倉敷中央病院
神戸百年記念病院(旧鐘紡記念病院)
国立循環器病センター
榊原中央記念病院
島根県職員
周南市新南陽市民病院
白井内科クリニック
高松赤十字病院
中国・四国国立病院機構
東芝メディカル(株)
徳島赤十字病院
広邦会関連病院
広島記念病院
福井赤十字病院
福山市立市民病院
三豊総合病院
勇心酒造(株)

以上

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