<ご  挨  拶>

「保健学科・保健学研究科の現在・未来」

                 岡山大学医学部保健学科教授   専攻副主任 池田 敏

 平成17年度の保健学科・保健学研究科の明るい話題として,博士後期課程が開設され第1期生3人が入学してきました。平成18年度は4人が入学予定です。前期(修士)課程の学生もコンスタントに入ってきており,1期7人,2期8人,3期4人,18年度は9人の予定です。大学院での研究の方も流れができてきており,学部の卒業研究を大学院生が指導するような場面もあり,双方に良い効果が得られているようです。ひとまず保健学科・保健学研究科としての形は整いましたが,大学院教育の充実は文部科学省の方針でもあり,これからは中身の充実を図っていかなければなりません。医療の現場で検査の重要性は増しており,簡便,迅速,正確,安価な臨床検査が求められています。短期大学部時代からのスローガン「考える検査技師」として医療現場で日々の研鑽に努め,その中で課題を発見し解決していく能力が重要になってきます。また,法律の改正により,衛生検査技師が廃止されることが決まりました。これから生理検査項目の見直し,授業科目の見直しなどが進められていくと思いますが,臨床検査技師の業務拡大,業務独占に向けての一歩前進と思われます。今後さらに高度な専門知識と高い技術を持った臨床検査技師が求められることになり,学部教育の充実とともに,社会人の方の要望に応えられるような大学院のシステムも考えていきたいと思います。
 独立法人化後は短期的に目に見える形での業績・評価が求められ,人件費抑制のため教員の削減が打ち出されたり,ギクシャクした感じです。保健学科は看護・放射・検査いずれも医療者として直接人にかかわる領域であること,国家資格を得るためには知識だけでなく技術の習得が重要な学科であること等,教育・研究における保健学科の特殊性を主張していきますが,効率化を図るとともに教育・研究に地道に取り組んで,魅力ある保健学科・保健学研究科を作っていくのが第一と思います。
 平成11年に保健学科が開設され,まる7年が過ぎました。短大最後の2学年にかかわり,保健学科で今年4期生を送り出します。卒業生の皆様は元気で頑張っていますか。ご指導いただいている先輩会員の皆様,最近の卒業生はいかがでしょうか。卒業生が増えてくると同窓会の運営も大変になると思いますが,このような人のつながりが思わぬ出会いを生むものです。あらたま会々員の皆様の益々のご活躍をお祈り致しますとともに,今後ともよろしくご指導,ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

 

同窓生だより

『卒後1年』


医学部保健学科検査技術科学専攻3期生 森脇 香織(徳島赤十字病院)


 私は、昨年4月に徳島赤十字病院に就職し、もうすぐ働き始めて1年が経ちます。この1年は本当にあっという間で、気づけばもう後輩の卒業式なのだなと感じています。
私も大学4年生のとき、友達と一緒に国家試験の問題を解いたり、教えあったりしたことを懐かしく思います。あの時、本当に合格できるのかという不安と、勉強して憶えなければという焦りを感じながら、皆で必死に頑張ったことは一生忘れられない思い出です。苦しかったけれど、あの時頑張れたからこそ今の私があると思うと、本当に努力してよかったと思い返すことができます。
現在、私は検体検査室で生化学を担当しています。毎日、大量の検体を迅速かつ正確に測定し結果を返すために、努力しています。学生の頃は、全部機械が測定するのだからと甘く考えていましたが、正確な測定値を返すためには人の目でのチェック、機械のメンテナンス、コントロール値のチェック、キャリブレーションなど、想像以上に大変で覚えるまで苦労しました。やはり、学生のときに実習したのと、実際に働くのとでは全然違うのだと実感しました。
今は生化学で働いていますが、これからいろいろな分野を経験していきたいと思います。どの分野でも働くのは大変ですが、経験して勉強していくことはとても大切なことだと思います。何事にも挑戦し、常にスキルアップしていけるような臨床検査技師を目指したいです。これからも初心を忘れず、頑張っていきたいと思います。

<卒後10年>

医療短期大学部7期生 山本 志保(呉市医師会病院臨床検査センター)


 医療短期大学部を卒業して10年、早いものです。
 細胞診の実習の時間、喀痰中の腺癌細胞を初めて見つけた日、「細胞のことをいっぱい勉強して、ガン細胞と良性細胞が見分けられる技師になろう。」とこっそり心に決めた私は、卒業後すぐに、大阪府立成人病センターの細胞検査士養成講習課程に進学し、細胞検査士になりました。
あれから、10年。地元に帰り就職してからも、ずっと病理・細胞診に携わっていますが、「ガン細胞と良性細胞の区別がちゃんと出来るようになったか。」と聞かれると、ちょっと答えに詰まってしまいます。
細胞学は思っていたよりずっと奥深く、複雑で、未だに毎日のように、良性か悪性か分からない細胞達と格闘しているというのが現状です。
毎日色々な細胞を見て、色々と勉強はしているけれど、果たして細胞を見る力は前進しているのか否か。
昨年の秋には、日本の臨床細胞学会と韓国の細胞学会共催の、合同学術集会に出席する機会を得、韓国「春川」に行って来ました。
簡単なポスター発表とは言っても、英語でのものだったので、とにかく必死の一言で、恥ずかしいくらい稚拙な発表でしたが、良い経験になり、また、良い励みにもなりました。
韓国人と日本人。国籍も、育った環境も違うのに、同じように毎日顕微鏡を見ており、パパニコロウ染色の色は同じで、同じ「細胞」で悩んだり話し合ったりしているという事に、何だかすごく感動しました。
私の発表が終わった後、前日の懇親会で親しくなった韓国の方が、小さな花束を下さったのにも、ものすごく感激しました。
が、季節が「秋」ということもあって、よく見れば「菊」の花束ではありませんか。カルチャーショック!!(笑)
色々と違う部分もあるけれど、「健康でありたい」と思う気持ちは世界共通で、医療検査に携わる者達の気持ちも、たぶん世界共通のものだから、医療人の1人として、少しでも役に立てるよう、これからも精進して行きたいと思っています。

<卒後20年>
臨床検査技師学校 12期生 工藤 智子(旧姓・牧田)


 最近結婚して、大分で生活しています。こちらもこの冬はとても寒くて、軽く雪なども積もりました。皆様もご存知のとおり、大分はあちこちで多彩な泉質の温泉が湧きます。いまハマっているのは赤川温泉という温泉で、硫黄の匂いがぷんぷかする温泉です。ここのお湯がアトピーと美肌効果に非常に効き目があり、週末に通うのがとても楽しみです。さて、お仕事のほうも再開し、市内の検査センターで病理・細胞診を担当しております。なかなかに忙しい仕事場ですが、がんばっております。技師学校を卒業して随分と年月が経ちましたが、同級生のみんなや先輩方、先生、お元気でいらっしゃるでしょうか。時々懐かしく思い出します。またいつかお会いできるのを楽しみにしております。

 

卒業生だより

「自分のからだで何が起こっているのか全く知らない」 
             保健学科検査技術科学専攻 4期生 田中瑠璃子


 進路選択時、人間のからだについて何も知らないことに大きな疑問を覚えたのがはじまりでした。英語が読めても、複雑な計算ができても、からだの不調の原因については一切わからない。小学・中学・高校と12年間も教育を受けても、からだに起きていることは自分のことであるはずなのに知らない。これまでの学校教育とは異なり、大学では自分の選択したものを学習できる点を生かさない方法はないと、この検査技術科学専攻を選択しました。もちろん「からだ」の勉強は他の学部・専攻でも勉強することはできますが、より人間中心であるものをという考えからの選択でした。「検査技師」という職業像をあまり明確にさせないままでしたがあまり不安は感じておらず、そんな決断をしてからもう5年ほど経ちます。
大学では様々な科目を履修するわけですが、ミクロ的、あるいはマクロ的な視点から「人間」を一つの対象として、知識と理解を深めました。講義・実習とあるなかで、その内容が豊富であること、また私は充実した課外活動に没頭したこともあり、いつしか「どうして?」という疑問を抱かない姿勢で講義を受けていたことも多かったように思います。病院実習では数多くの患者様を目の前にし、様々な疾患に対する教科書的な感覚を、現実味を帯びたものとして痛感した日々でした。再び自身の将来像を考えたとき、これまでの反省も含め疑問を持った原点の姿勢に帰着しました。卒業後も、私はもう少し「どうして?」の続きを歩んでゆくことにしています。
最後になりましたが、共に学び・遊び・支えてくれた友人、4年間ご指導くださいました先生方や諸先輩方、そして私の意志を尊重して私を岡山に送り出してくれた両親に、この場をお借りして心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

「私の大学生活」 
             保健学科検査技術科学専攻 4期生 稲葉昌子


 平成14年の4月、はれて岡山大学の学生となり私の新生活が始まりました。親元から離れ初めての一人暮らし、新入生歓迎コンパなどから始まり高校生活までしなかった経験を多くしてきたと思います。中でも私にとって一番心に残る経験をした場は部活動でした。
大学の部は先生の指導下で行う高校までの部活動とは違い、学生が中心となって運営していくため、試合の運営などは学生が行っていました。私の所属する空手道部は上下関係にも厳しく空手というスポ−ツ以外に礼儀作法についても先輩から指導していただきました。当時空手を経験したことがないため、チャレンジしてみようと軽い気持ちで入部しましたが、厳しい先輩の指導など辛く苦い経験をし、やめてしまおうと考えたことも数多くありました。しかし、決めたことは最後までやりとおすことをモット−にしてきたため、自分に負けると思い、続けてきました。続けてきたことにより、試合のため福井、高知そして山口などへ旅行、朝7時からの練習、裸祭りの見学(男は参加していました)など数々の体験をしてきました。また経験だけでなく同じ経験をしてきた仲間もでき、続けてよかったと感じています。
新しいことにチャレンジすること。そしてそれを続けること。簡単なようでとても難しいことだと思います。途中で投げ出してしまいたくなることもあると思います。しかし、続けることで得るものは大なり小なりあると思います。私は4月から病院で働くようになってもチャレンジ精神と、そしてやると決めたことは最後までやりとおすことを忘れずに心に刻み付けておきたいと思います。
最後になりましたが、お世話になりました諸先生方、先輩方、その他多くの皆様方にお礼申し上げます。


<岡山大学医学部保健学科検査技術科学専攻4期生卒業研究テ−マ>


【H17年度 前期】

1. 音楽聴取による唾液IgA濃度の経時変化 遺伝子解析学(石川先生)
長田紗耶香 万力麻美
2. マウス脊髄のグリア境界膜を構築する分子の解析
               −生後から成体における分布の変化−
臨床病理学(草地先生)
黒崎雅恵
3. 心臓発生におけるヒアルロン酸結合型マトリックスタンパクの解析 臨床病理学(草地先生)
富坂竜矢
4. アガロースゲル等電点電気泳動法によるヒト血清apoB-リポ蛋白分離の基礎的検討 臨床化学検査学(一村先生)
浅利祥子 柴田昌子
5. 核Matrix Attachment Region DNA(MAR)に対する自己抗体の解析
           −自己免疫病態解析のための新たな手法−
免疫検査学(唐下先生)
出口亜弥 徳重沙織
6. リンパ節炎における樹状細胞の分布とPhenotypeの免疫組織学的検討 病理形態学(高橋先生)
池田磨紀 播戸麻衣
7. Fc受容体と興奮性神経細胞死
             −カイニン酸局所注入モデルでの検討−
高次機能解析学(岡本先生)
小林雅佳
8. 冠動脈疾患例における血中HDL-アポリポタンパク質CI濃度測定の臨床的意義 医療保健情報学(池田先生)
上川大輔 岡杖奈緒
9. ウイルス粒子暴露による宿主細胞のウイルス許容性増大 ウイルス学(荒尾先生)
氏平晶子 岸川 有希
10. 嫌気性菌プロピオニバクテリア属DNAの定量解析 〜基礎的検討〜 生体機能学(片岡先生)
河村幸佳 小林志帆
11. TwitchおよびTetanusにおける筋音図の基礎特性 生体情報解析学(岡先生)
稲葉昌子 頓宮久美子
12. はとむぎテンペの糖尿病予防に関する実験的研究 高次機能解析学(岡本先生)
谷 史年


【H17年度 後期】
13. 呼気凝縮液の基礎的検討 生体機能学(片岡先生)
來島由佳里 郡 友美
14. ストーマ使用患者に対する音楽イメージ誘導法の唾液IgA濃度測定による評価 遺伝子解析学(石川先生)
辻 亜由美 宮地奈都美
15. ヒト胎児脳で発現するペルオキシソーム局在化シグナルを持つタンパク質の細胞内局在性の解析 遺伝子解析学(石川先生)
三浦雅史
16. 血流および筋緊張が筋のマッサージ効果に及ぼす影響に関する基礎的検討 生体情報解析学(岡先生)
末田駿介
17. 新しい動的筋音図計測法の提案 生体情報解析学(岡先生)
福田賢一
18. 血清ニトロ化タンパク質測定の基礎的検討 医療保健情報学(池田先生)
高橋紀子
19. はとむぎテンペの糖・脂質代謝改善作用に関する実験的研究 高次機能解析学(岡本先生)
木多寛恵
20. 免疫能評価の指標としてのラクトフェリンに関する基礎的検討 血液検査学(中田先生)
鳥井昭男 松下圭佑
21. ウイルスの吸着/侵入による代謝活性の上昇 ウイルス学(荒尾先生)
川北将規 松尾奈菜
22. Bral2発現神経細胞のサブタイプの探索と機能解析 臨床病理学(草地先生)
高橋里沙
23. 若齢マウス眼におけるW型コラーゲンα3α4α5分子の分布と発現時期について 臨床病理学(草地先生)
中島 愛
24. ラット実験的心筋梗塞における細胞外マトリックス分子バーシカンの分解と分解酵素ADAMTSの発現検討 臨床病理学(草地先生)
鈴木理恵
25. Helicobacter pyloriが宿主に及ぼす免疫反応の解析 細菌学(横田先生)
大辻友里菜
26. 胆汁検体からのHelicobacter hepaticusの分離 細菌学(横田先生)
田中瑠璃子
27. Helicobacter pylori熱ショックタンパク質60(HSP60)刺激に対するDEC205の発現解析  細菌学(横田先生)
藤本聖人
28. 胸腺の新しい樹状細胞について 病理形態学(高橋先生)
氷上沙矢佳 脇本 拓


〈岡山大学医学部保健学科検査技術科学専攻 3期生 就職・進路状況〉


 進 学 (2名)
    
      岡山大学大学院保健学研究科修士課程

  就 職 (41名)
   病院
 岡山大学医学部・歯学部附属病院    倉敷中央病院
 倉敷平成病院             岡山協立総合病院
しのざきクリニック          金光病院
 岡山赤十字総合病院          岡山労災病院
 倉敷広済会病院            岡山済生会総合病院
 倉敷リハビリテーション病院      倉敷成人病センター
 日本鋼管福山病院(広島)    徳島県職(県立病院or 保健所)(徳島)
 甲南病院(兵庫)        広島県加計町立病院(広島)
 中津川市民病院(岐阜)     長崎赤十字病院(長崎)
 神鋼病院(兵庫)        鐘紡記念病院(兵庫)
 梶川病院(広島)        山口大学附属病院(山口)
 徳島赤十字総合病院(徳島)   磐田市市民病院(静岡)
 香川県済生会病院(香川)    大田記念病院(広島)

企業・研究所・検査センター・健診センター等
アロカ(株)(岡山)    岡山県健康づくり財団(岡山)
愛媛大学健康管理センター(愛媛) 京都微生物研究所(京都)
ファルコバイオシステムズ(京都・岡山)         
岡山医学検査センター(岡山)
日本食品分析センター(大阪)    淳風会健康管理センター(岡山)
 
                             以上

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